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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …20
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目を開いて、振り向くと…雅治さんが男を睨みながら立っていた。
雅治さん!!
えっ?でもなんで雅治さん戻ってきたの?
テレパシーでも通じた?
俺、こんな格好だよ?
さっき通り過ぎたくらいだから、俺って気付いてないよね?
普段の雅治さんなら、ナンパされてる女、助けたりしない…よね?
あぁ…嬉しいけど複雑な気分。
「え?何?俺が先に声かけたんだけど?」
雅治さんの睨みにもめげずに、男は言った。
「それがどうした?」
「…は?あぁ、あんたがこの子のツレ?」
雅治さんは男を睨んだまま、俺の方には目を向けない。
「…とにかく、手を離せ」
う…
これは?
やっぱり、俺とは気付いてない?
「この子さぁ、かなり寒そうにしてたから、どっか入ろうって話してたんだよ。な?」
男は俺と雅治さんに視線を行き来させた後、雅治さんの睨みに怯んだのか、ため息をつきながら手を離してくれた。
俺は慌てて雅治さんの方に移動した、けど、一歩離れたところまでしか近寄れなかった。
「ツレが来たんならヨカッタな?…じゃーな」
男は名残惜しそうにしながら、でも逃げるようにその場を去っていった。
「……」
無言の雅治さんを、そっと見上げる。
「あ、の…あり、がと…」
そう声をかけると、ピクッと反応した雅治さんが、ゆっくりと俺を見た。
目が合うと同時に、俺の心臓は壊れそうなくらいにドキドキと早鐘を打ち始めた。
雅治さんの顔が、ゆっくりと困ったような表情に変化する。
「その声…やっぱり、りく…か?」
雅治さんが、確認するように呟いた。
ああ、俺だと分かってくれた!
俺を凝視する雅治さんに、拒否の色は見えないので、ひとまず安心する。
雅治さんの反応を見逃さないように、目を合わせたまま小さくコクリと頷いた。
すると、雅治さんが大きなため息をついて、うな垂れた。
えっ?えっ?
どういう反応っ?
「その格好…どうして?」
少しの沈黙の後、顔を上げた雅治さんが聞きにくそうにそう言った。
あぁ…
呆れてる?
やっぱり女装とかダメだった?
てゆーか、ダメだよね?
考えなくても分かるじゃん!
あぁ、俺の馬鹿、馬鹿!!
あ、なんだろ?
何か急に悲しくなってきた。
あれだけ色々やったのに…
マキさんや、遥香さんにまで迷惑かけて…
俺、ホント、馬鹿…
なんか、込み上げてくるものがあって、それを誤魔化すために下を向いた。
「とりあえず、車まで、行こうか?」
「…ん」
雅治さんは俺の格好について追求することはせず、そっと俺の背を押すようにして歩き出した。
そんなちょっとの触れ合いが、やけに嬉しくて、さらに泣きそうになる。
拒否られてないのかな?
あ、もしかして、一緒にいるのを誰かに見られるのが恥ずかしくて、車まで行こうとか言ってる⁈
「あー…そう言えば…待たせてごめん。ロータリーに車が入れなくて。その先のパーキングに、停めたから」
若干、挙動不振な雅治さんに釣られて、俺も頭が真っ白になりそうだ。
二人でパーキングに向けて歩く。
「…ごめん」
とりあえず、謝るしかない、と思った。
「え?」
「ごめん」
「……いや」
それから、二人とも無言のまま、雅治さんの車に向かった。
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