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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …38
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キラキラと輝く眼下の景色が、本当にキレイ。
胸が、締め付けられるような思いがする。
桜は儚いからこそ美しい、というのを何かで見た。
イルミネーションに、儚さなんてない。
なのにどうして、寂しい気持ちになるんだろう。
…それはきっと、今日この日が特別な一日だから。
今日という日は、もう二度と無いのだから。
時間に対して「儚い」というのは変かもしれないけど…
今しかない「今」が、とても愛おしくて、過ぎてしまうのが悲しいんだ。
観覧車の、時計のような動線が、その想いをさらに加速させる。
「キレイだね…」
「ん」
「帰りたく、ないな…」
折り返し地点に近づいてきて、思わずそう呟いた。
「ん」
雅治さんは、そうポツリと返事しただけだけど、俺と同じようなことを考えてるんじゃないか?と、そう思った。
実際にこの場所から帰りたくないとかそういうことじゃなくて、もっと感情的なことを。
俺たちが乗っているゴンドラが、頂上に、着いた。
「ね、陸?」
それまで、景色を眺めていた雅治さんが観覧車に乗って初めて俺の目を見た。
「ん?」
雅治さんが、首を少し傾けた。
前髪が、パラリと揺れる。
「キス…しても、良いですか?」
…え?
雅治さんらしくないセリフ。
俺、夢でも見てるのかな?ってくらい、ドラマみたいな情景がそこにあった。
バックにイルミネーションのキラキラした景色を背負った、モデルのような外見の彼氏。
こんなこと言われたことないから、ちょっと返事が遅れてしまう。
すると、雅治さんが俺の左手を取って持ち上げた。
そうして自分の顔を近付けて、俺の薬指の付け根に「チュ」とキスを落とした。
それはそれは、愛おしそうに。
優しい、キスだった。
顔を上げた雅治さんは、まるで王子様のようだった。
イルミネーションの光をキラキラと自分の物のように纏っている。
いや、もう雅治さん自身がキラキラと発光しているようにさえ見えてきた。
「陸?」
雅治さんが、俺の顔を覗き込む。
きっと、俺は、すごく情けない顔をしているに違いない。
だって、だって、雅治さんがカッコ良すぎて、直視するのが辛いんだ。
「キス、させて?」
雅治さんはそう言いながら、俺にゆっくりと近付いてきた。
ドクリと、心臓が跳ねる。
思わずギュッと目を瞑るとすぐに、フワリと唇に柔らかいものが当たった。
飛び跳ねるくらい、胸が震えた。
唇から、かあっと熱が広がる。
唇が離れてから、ゆっくりと目を開けると、困った顔の雅治さんがいた。
「そんなに緊張されると、こっちまで緊張するんですけど…」
「〜っ!だ、だって…」
「だって?」
言えない!
好き過ぎて困る、とか、そんな恥ずかしいこと言えない!
なにも言えずに目線をさ迷わせていると、雅治さんが握っていた左手を離した。
雅治さんにとっては、特に何も意識してない行動だったのかもしれないけど、俺はそれをすごく寂しく感じてしまった。
慌てて雅治さんの手を追いかけて、ギュッと握った。
「ん?」
雅治さんが、優しく笑いながら首を傾げた。
〜〜っ!
あぁ!もう!
俺は堪らずに、自分の唇を雅治さんのそれに押し付けた。
好き。
好き過ぎて、もう、どうしたらいいか分からないよ!
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