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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …雅治4
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どうやら記事は、さっき姉貴が見学を勧めてきたホテルの教会を取材したもののようだ。
あ、そうか。
姉貴が勧めてきたってことは、同性でも挙式が出来る教会って事か?
いや…
同性で挙式出来る教会なんて、日本にあるのだろうか?
まだ同性婚も認められていないし。
と言うことは、姉貴の知人が責任者とか言ってたから…無理を言って?
何にせよ、その教会は俺の興味を誘った。
ドンと載せられたその教会の写真は、実物を見てみたいと思わせるような珍しいデザインだった。
姉貴は、ここで陸にサプライズでもしろって言いたいんだろう。
この雑誌のようなプロポーズとか婚約式とか。
そこに協力するぞ、と。
でもまぁ、プロポーズはすでに済んでるし、人前でわざわざ婚約式するなんてのは柄じゃないし。
じゃあ、見学する為だけに行くかと言われたら…それはちょっと面倒臭い気がする。
だけど、その写真を眺めていたら、ふと、陸との結婚式が頭に浮かんできた。
ここで陸に永遠の愛を誓って、誓われて。
その幻想的な写真が、何か特別な場所に見えてきた。
………。
はぁ…
なんだかんだともう姉貴の思惑にハマりそうな俺がいる。
実は、陸へのクリスマスプレゼントを考えた時、指輪が一番に浮かんだ。
婚約指輪を送りたい、と。
時計は送ったけど、やっぱり虫除けには指輪を送りたい。
もちろん、こんなの(俺の所有物という印)送って嬉しいのは俺の方であって、陸が喜ぶかは分からない。
だって普段着けられないだろ?
うちの会社もそうだけど、サラリーマンは結婚指輪(左手の薬指の指輪)以外のアクセサリーは基本禁止されているんじゃないだろうか?
あぁ、でも…
やっぱり指輪が頭から離れない。
この…教会で渡すっていうのも、またとない機会だ。
俺は雑誌をバッグに突っ込んで、席を立った。
今から注文して間に合うだろうか。
実は…
陸の指輪のサイズはもうだいぶ前からチェック済み。
陸が寝てる間に測っておいた。
女々しいか?
いや、女々しかろうが何だろうが、こんな日のためにチェックしておいたんだし。
誰にも文句は言わせない。
店を出てこれまた以前からチェック済みの、アクセサリーショップへと向かう。
道すがら、姉貴にメールを打った。
ホテルの予約と、教会の見学の件を頼むために。
それと、そこの責任者と連絡が取りたいことも伝えた。
教会で、陸に愛を誓おう。
今までぼんやりしていた二人の誓いが、きっと神聖なものになる。
二人で未来を見て、これからのこと、ちゃんと考えよう。
例え、俺たちが生きている間に同性婚が認められなかったとしても、その教会での思い出は、特別なものになるはずだ。
この機会を逃してはいけない。
その考えに至ったら、居ても立っても居られなくなった。
陸を離したくない。
一生側にいたい。
伝えても伝えきれない陸への想い。
こういう"形"にするのも悪くない。
あやふやにしていた事とか、これを機にちゃんとケジメをつけよう。
家族への報告も。
逃げていたけど、そろそろちゃんとしたいから。
…あぁ。
なんだか俺、姉貴の思い通りに動いてないか?
「ふっ」
思わず笑いが出た。
陸は間違いなく姉貴に気に入られている。
変なとこ真面目な姉貴に、これだけ気に入られた陸を、改めて愛しいと思った。
恋人より先の家族という存在。
そこに近付くために、いやそうなるために、俺はもっと努力しなきゃな。
「ふ…」
再び笑いが漏れる。
陸の為に必死になる俺に思わず笑いが出た。
誰かの為に動く俺なんて、昔なら考えられない。
恋だの愛だのにうつつを抜かすなんて、ダサいし。
だけど今の俺は嫌いじゃない。
だって、陸が隣に居る俺、すっげぇ幸せ者だから。
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