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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …46
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約束から10分遅れて(途中で雅治さんが遅れる連絡はしてたけど)待ち合わせのエレベーターホールに着いた。
そこには、シワひとつないスーツを着こなした、爽やかな男の人が立っていた。
「大嶋さんですか?小栗です。お待たせして申し訳ありません」
「いいえ。本日ご案内させて頂く、大嶋と申します。宜しくお願いします」
大嶋さんというその人は、俺たち二人に丁寧に挨拶をしてくれた。
「お世話になります。申し訳ありません。こちらの我儘に付き合って頂いて…」
雅治さんも丁寧に頭を下げる。
「いえいえ。いつも篠崎様にはお世話になっておりますので。これくらい容易い御用です。それに、これも立派な仕事ですので。お気になさらず」
篠崎って、遥香さんの名字だよね?
このホテルでも仕事してるのかな?
顔広いなぁ…すごいなぁ…
「では、早速ですが、参りましょう」
接客業のプロなんだろうな、っていうのがヒシヒシと伝わってきそうなその完璧な笑顔に、俺もつられて微笑んだ。
「よ、宜しくお願いします」
そう言えば…
こうやって男二人で式場見学する俺たちのこと、この人まったく変な目で見ていない。
ほんとにプロだー。
そんな大嶋さんに続いて、俺たちもエレベーターに乗り込んだ。
「こちらの式場へいらした事はありますか?」
「いえ…」
「ないです」
友人やら親戚の結婚式に、数回行ったことはあるけど、ここは初めてだ。
「そうですか。…こちらは最上階にチャペルがございまして、そこからの眺めが素晴らしいんですよ。ちなみに、天空のチャペルと申します」
「へぇ」
天空って…大層な名前だな。
部屋の窓から見る景色より凄いのかな?やっぱり。
「一つ下の階の宴会場からの景色も人気なんですよ。夜景が特に。本日はそちらの見学はよろしいとの事ですが…もし機会がございましたら、いつでもお声がけくださいね」
機会…って。
思わず雅治さんと目を合わせて、笑い合った。
そんな"機会"が来るといいな、なんて思いながら。
エレベーターが最上階に着いて、扉が開く。
降りてすぐの廊下は、窓一つなく、オレンジ色の淡い照明が幻想的に瞬いていた。
「最上階はチャペルのみとなっております。この廊下の先がチャペルとなります。こちらの階段は、下の宴会場まで繋がっております」
話を聞きながら足を進めると、足元に花びらが散っている事に気付いた。
その花びら達が、夢の空間のような演出をしている。
俺の目線に気付いたのか、大嶋さんがこう言った。
「先ほど、式を挙げられたお客様のフラワーシャワーの花びらでございます。チャペル内もまだ片付けていないのですが…ですがその方が、花や祭壇の飾りがあって実際の雰囲気を感じていただきやすいかと」
その説明を聞きながら、俺たちは大きな扉の前に立った。
「こちらがチャペルになります」
ゆっくりと、扉が開かれる。
「…わぁ!」
開かれた扉の先、教会の奥…祭壇の向こうが最初に目に入った。
そこは、全面がガラス張りだった。
ガラスの向こうには、キラキラと夜景が見える。
中央の十字架の上にはステンドグラスがはめ込まれていて、昼間は陽の光で美しく輝くのだろうと想像できた。
扉を潜ると、また感嘆のため息が出た。
参列者の横の壁も、ガラス張りになっていたからだ。
「すご…」
「すごいな」
少しの間、ぽかんと部屋の中を眺めた。
日常から切り離されたような、不思議な感覚に鳥肌が立つような気がした。
非日常といえば、さっきのイルミネーションもそうだったけど…
それ以上に特別な空間に感じるのは、そこが本当に特別な場所だからだろう。
おそらく、一生に一度だけ、愛を誓う事が出来る場所。
窓の外に見える夜景に、引き込まれるような目眩さえ覚えた。
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