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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …49
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雅治さんを見ると、雅治さんが箱を開けて指輪の一つを取り出した。
「陸…」
そう言って、左の手のひらを俺に差し出す。
「実はこの指輪を渡すために…大嶋さんに協力してもらったんだ」
「え?」
協力?
指輪を渡すために?
「陸、手を」
雅治さんの再度の呼びかけに、雅治さんの手に右手を重ねると「左手だよ」と、微笑まれた。
左手を、雅治さんの手に重ねる。
「陸。一生、大事にする。ちゃんと、夫婦になろう」
雅治さんはそう言って、俺の左の薬指に、指輪を嵌めた。
その指輪は、俺の指にぴったりで…
「陸も、嵌めてくれる?」
そう言って指輪の入った箱を差し出した。
箱の中には、俺の指にあるのと同じデザインの指輪。
震える指で、それを取り出す。
「これ…この指輪って…」
「ん。最初は婚約指輪を贈ろうと思ってたんだけど…指輪見てたらお揃いで欲しくなって…そしたらもう結婚指輪かな?と。…勝手に選んでごめん」
結婚、指輪…
雅治さんの選んでくれた…
「ごめん。やっぱ、こんなの迷惑だった?」
雅治さんのその言葉に、間髪入れずに首を横に振る。
「嬉しいに、決まってんじゃん!ただ、ちょっと、ビックリして…」
「ん…そっか。なら、良かった」
雅治さんが嬉しそうに微笑んで、左手を差し出した。
「じゃ、お願い、します」
あぁ。
もしかして、もしかして。
今さらだけど。
俺、雅治さんと結婚式を挙げてる?
ごっこ、かもしれないけど、それにしては手の込んだサプライズ。
なにより、今やってるのは本物の指輪の交換だ。
心を落ち着けるために、大きく深呼吸をする。
そうして、雅治さんの薬指に指輪を嵌めた。
「陸…」
手が離れる前に、雅治さんが俺の手を握った。
「変だな。これだけのことなのに…陸とちゃんと夫婦になれた気がする」
雅治さんが嬉しそうにそう言うのを見て、思わず涙が溢れた。
想像もしていなかった。
雅治さんから結婚指輪をもらえるなんて。
嬉しいのとびっくりしたのとで、なぜか涙が止まらない。
「夫婦って…、ふふっ」
泣いてることが恥ずかしくて、そんなことを言ってみた。
「俺、もうこの指輪は外さないよ。…上司にも…会社にもちゃんと話したんだ。陸との結婚のこと。…だから、会社でも外さないし、傍目から見ても俺は既婚者になるんだ」
雅治さんは、自分の指輪にキスを落とした後、俺の左手を取って、俺の指輪の上にもキスを落とした。
会社に、言った?
俺との結婚のこと?
いいの?いいの?
「っ!俺も、言う!」
ふと思い立ってそう言うと、雅治さんは優しく笑って「ちゃんと考えてから決めてくれた方がいい」と言った。
その言葉で、雅治さんがどれだけキチンと考えて、会社に報告してくれたのかが分かった。
その想いに、さらに胸が熱くなる。
「じゃ、次は…誓いの、キス?」
照れながらそう言う雅治さんの手をギュッと握り返した。
これからの二人の未来を、雅治さんの瞳に見ながら。
ゆっくりと顔を近付けて俺たちは唇を重ねた。
まるで夢のような空間、夢のような結婚式。
いや、今だけじゃない。
今日の全てが、まるで夢のようだ。
でも、
それが夢じゃないことを左手の薬指が証明してくれる。
それを、俺は明日の朝、ベッドの上で温もりに包まれて、しみじみと眺めるのだ。
now and forever M & R
内側にそう刻印された指輪は、俺の薬指で一生輝き続けることとなる。
手のひらから始まる恋【後日談】 …end.
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