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警鐘
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ねえ、どうして?
どうして俺にキスしたの?
悪ふざけ?忘れて?
顔が見えないから、どういうつもりなのか全く分からないよ。
俺は、動くことが出来なかった。
知りたい。
どうしてこんなことしたの?
忘れてって…こんなキス…忘れられる訳がないよ。
すぐに、扉が閉まる。
降りなかった俺を、小栗さんが見上げた。
不安そうな目が揺れている。
「どうして、降りないの?」
「…どうして、は俺のセリフです」
あ、俺って言っちゃった。と、冷静な俺の声がした。
でも、そんなの、もう構えない。
今は素直にならなきゃ、後で絶対後悔する。
咄嗟にそう思った。
俺自身、今どうすべきか分からない。
混乱してる。
でも、今このまま、小栗さんと別れるのは嫌…なんだ。
小栗さんが俺を見つめたまま立ち上がって、俺に一歩近付いた。
今度は俺が見上げる。
エレベーターが8階に着いて、扉が開いた。
俺は小栗さんのシャツの裾を思わずギュッと握った。
小栗さんは、何も言わずに歩き出す。
一緒にエレベーターを降りて、廊下を進んだ。
頭の中の警鐘が鳴り止まない。
小栗さんは無言のまま部屋の前に立ち止まり、ゆっくりと鍵を回して、ドアを開けた。
俺も小栗さんの後に続いて部屋に入る。
バタン、と扉が閉まった。
それと同時に、小栗さんが振り返り、俺をドアに押し付けて
深く唇を押し付けた。
この瞬間まで、俺は自分の理性と戦おうとしていた。
これは男同士ですることじゃない。
今なら、間に合う。
今なら、戻れる。
でも、身体は正直で、今までに感じたことのない唇の感覚に酔いしれていた。
ダメだ…
でも、キモチイイ…
「ずっと……初めて…手をつないだ時から…こうしたかった」
キスの合間に囁かれる。
あの時から?俺と同じ事を思っていてくれたの?
まるで、愛を囁かれているような気がして、俺は小栗さんの背中に手を回した。
そして自分から、舌を求めた。
小栗さんがピクリと反応する。
男だから…お互い気持ち良い事に逆らえないんだよね、なんて、言い訳が頭をよぎった。
「んっ、、俺…も」
その俺の答えに、一瞬離れて苦しそうな目を俺に向けてから、再び激しく俺の唇を貪ってきた。
口が溶けてしまうんじゃないかと思うほどの、トロリとした感覚がする。
手と同じで、ピッタリ合わさる唇。
気持ちいいところに届く、舌。
お互いの吐息が妙に響く。
俺の耳は小栗さんの吐息を拾う事に集中していて、部屋に入った時に鳴っていた警鐘は、もう聞こえてこなかった。
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