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電話にて
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練習初日に受けのセンスがないと感じた俺は、ローション諸々をクローゼットに片付けた。
それから年末年始休みに入り、実家に帰ったり、友達と遊びに行ったりと何となく忙しく過ごして、小栗さんの事はあまり考えないように過ごした。
年が明けてすぐの土曜日、小栗さんと会う予定の一週間前になって、小栗さんからスマホにメールが届いた。
"今から電話出来る?"
と言う一言だった。
アパートでゴロゴロしていた俺は、正座して"もちろんです!"と、返事を送った。
そう言えば、今までやり取りしてたのは仕事携帯だった。
俺のケー番は教えていなかったな、と個人携帯の番号も添えた。
すぐに、見たことのない番号から着信がある。
「はっ、はい!佐藤ですっ!」
『はは。小栗だけど。今、大丈夫だった?』
「はい!全然大丈夫ですっ」
久しぶりに聞く小栗さんの声に、胸が暖かくなった。
低音で、よく響く声。
仕事中はドスが効いてる感じで怖いけど、今は優しく癒される声だ。
『元気だね。えーと、来週の事だけど…突然誘ったりして悪かったね。その…俺……』
「いえいえ!誘ってもらって嬉しかったです!おれ…僕、ちょうど小栗さんに会いたいな…って、思ってたんです!」
緊張していたこともあって、俺は思ったことをまくし立てた。
『…え?…そう…』
「えーーーと、お店なんですけど、**駅に、雰囲気の良い居酒屋があるんです。お酒の種類が多くて楽しいし、食べ物も美味しいし。そこにしませんか?時間は、何時でも大丈夫です!」
『お店探してくれてたんだ。ありがとう。うん、じゃあ、7時に**駅にしようか?』
「ハイ!あ、北口の改札のところにしましょう!もし分からなかったら連絡くださいね」
『うん。たぶん大丈夫だよ』
「楽しみです。小栗さんと会えるの!」
『!…君は……』
??
小栗さんはそう言って黙ってしまった。
俺、一人ではしゃぎ過ぎた?何か気分を害したのかな?
どうしよう。
「あ、あの、すみません。一人ではしゃいでしまって…」
『あー…違う。そうじゃなくて…その……
この前のこと、嫌じゃなかったのかなって。
俺、謝りたいのもあって今回誘ったんだけど、佐藤君があまりにも何もなかったかの様に話してくれるから…気を使わせてごめん。ありがとう』
「あ…」
そう言えば、言葉を交わすのって、あの夜以来だ。
小栗さん、あの時のことずっと気にしていてくれてたのかな…
だとすると…
「嬉しい…です」
『え?』
「僕のこと、気にしてくれて嬉しいです」
『いや…。本当に、悪かった』
違う、謝って欲しいんじゃない。
謝られると、俺のことを拒否されてるみたいな気がして嫌だ。
「謝らないでください!そうじゃなくて…。
俺、嫌じゃなかったですから!」
『!!』
電話越しに、小栗さんが息を飲んだのが分かった。
「食事、誘って貰えて単純に嬉しいです。楽しみです!」
『…佐藤君って…』
「え?」
『なんか…可愛いな』
「えっ⁈」
『いや…なんでもない。
…俺も、会えるの楽しみだよ』
それから『おやすみ』と囁かれて、すぐに電話が切れた。
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