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素直に
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ていうか…俺はオカにもっと突っ込んで聞いてもらいたいのだろうか…
いや、聞かれたとしても何て答えるの?
相手は男の人だから、好きになれません、とか言うの?
マスターがいつの間にか戻って来ていて、俺の顔をじっと見ていた。
「佐藤君はさぁ、何から逃げてんの?」
「に、げる?」
「楽な方に逃げた結果が、今じゃないの?身体だけの関係、みたいな?」
「……」
「俺、前も言わなかった?勿体無い、って」
勿体無い…
そう、勿体無いくらいの出会いなんだよね。
相性だけじゃない、もはや小栗さんとの出会いが、俺にとっては勿体無いくらいにキラキラしていた。
でも、俺達にこれ以上の関係なんであるの?
その先を考えるのが怖いよ。
……あ、そうか
俺、そこから逃げてるんだ。
怖いから、考えることから、逃げてる。
「素直になれば?」
それまで黙っていたオカが言った。
「言いたくないなら無理には聞かないけどさ、その辛そうな顔、なんなの?それに、そんな顔して好きじゃないって何?好きって認めた方が楽になるんじゃないの?」
「…でも、そんな風になったら、相手に迷惑がかかるかも…」
「だーー!それ、ムカつくから!さっきマスターも言ったけど、言葉が足りないとお互い辛くなるだけだから!」
目がジワリと霞んだ。
そうなったら、いいな、って思ったから。
言葉にしてそれが通い合えたら、何て素敵なんだろう…
でも、でも…
気持ちがいっぱいに溢れそうで、心臓辺りが痛い。
「もし、好きと伝えられなくても、好きって想うのは自由でしょ?好きを認めたら色々辛くなるから、そこから逃げるのも分かるけど…。
でもそれって、幸せからも逃げてるよね?
例えば、会えた時、声を聞いた時、触れた時…それが『好きな人』だったら、素直に幸せ感じられるでしょ?
それを逃すなんて…"勿体無い"よ?」
マスターの言葉に、今度こそ涙が溢れそうになった。
今まで色々グチャグチャ考えてた事が、一本の線になった気がした。
好きだから、会えたら嬉しいし、会えなかったら淋しいし…
好きだから、今日も…電話の向こうの女の声に、嫉妬した。
俺、好きなんだ。
小栗さんの事が。
好きで、好きで…逃げてたんだ。
傷付きたくないから。
ふいに、アキちゃんの「自分と向き合って。逃げないで」という言葉が思い浮かんだ。
アキちゃん、分かってたのかな…
彼女の言ってた事って、こういう事だったんだ。
なぜだか、クスリと笑いが出た。
自分の事なのに、自分だけが分かってなかったのかも。
「あー、俺、何悩んでたんでしょうね〜!」
潤んだ目をごまかすように、カクテルを飲み干した。
「さーて、さとちんが何だかスッキリした所で…マスター!このロング…アイスティ、おかわり!」
「えっ?またこれ飲むの?酔っ払わないでよ?」
「りょうかーい!二つね?」
「ちょ!マスター!!」
この二人の、テンションすり替えの技は本当にすごいと思う。
心の中で、二人に何度も何度もお礼を言った。
いつか、いつかちゃんと報告できる日が来るといいな…
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