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待ち伏せ
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今回の運用テストは3日かけて無事に終了した。
最終日の金曜日は、いつもの如く、S電機さんから打ち上げに誘われた。
作業終了後に、小栗さんと佐々木さんと一緒に駅前の居酒屋に向かう。
店の前で課長さんやら今回お世話になった数名と合流した。
その中には、河野さんの姿もあった。
どうやら今回の幹事を買って出てくれて、お店を予約してくれたそうだ。
合計8名でテーブル席に案内される。
河野さんが、課長さんと佐々木さんと俺を「こちらへどうぞー」と、奥へ促した。
俺の向かいに河野さんが座った後、さりげなく小栗さんに「ここどう?」と隣を指差している。
この二人が並んでるのを見るのは、なんか嫌だ…
胸がチクチク傷んだ。
小栗さんは、河野さんに指差された所に座ると思いきや…
「あ、長谷川さん。私、そこでも良いですか?」
と、河野さんの言葉が聞こえなかったかの様に、俺の隣に座ろうとしていた人に声をかけた。
「あぁ、いいよ」
テーブルを回って来た小栗さんが俺の横に立って、小声で「こっち座って」と言って俺の腕を引いた。
俺を端の席に座らせ、俺の隣に小栗さんが座った。
何か…キュンとした。
俺のこと、独占してくれたみたいで嬉しかった。
皆でワイワイやってたから、俺達のやり取りなんて誰も見てない、と思いきや…
ふと見渡したら、少し怖い顔の河野さんと目が合った。
見られてた?
怖い顔はほんの一瞬で、俺と目が合うと微笑んでくれた。
あれ?怒った顔は、見間違いだったのだろうか…
それから、皆でビールで乾杯して、その会は終始賑やかに進行した。
それにしても、河野さんってハツラツとしててすごい。
この人がこの飲み会を引っ張ってるみたいだ。
皆の冗談とかにもさらりと返して、頭の良さを伺わせる。
ただ、気を使ってくれてるいるんだろうけど、グイグイ来る感じはちょっと苦手なタイプかも。
途中、小栗さんがトイレに立った隙に、俺の隣には別の人が座って…戻ってきた小栗さんは、空いていた河野さんの隣に座った。
小栗さんがスマホを取り出した時、河野さんが「あ、同じ機種だ!ちょっと見せてー」って話をしているのを、チラチラ盗み見た。
…同じ機種、いいな。
「佐藤くん!飲んでる?」
ぼーっとしてたら、また別の人が俺の近くに挨拶に来てくれた。
「あっ!ハイ!いただいています」
俺はヤキモチを妬いているのが顔に出ないように、笑顔を貼り付けるのが大変だった。
そろそろお開き…と言う所で、俺はトイレに立った。
トイレに行く前に「会計は?」と河野さんに聞くと「ここは良いですよ」と言って、俺と佐々木さんからは受け取ってくれなかった。
太っ腹な会社だな…
その後…混雑していたトイレから出た所で、トイレ待ちなのか、河野さんと鉢合わせた。
気まずい…けど、とりあえず笑顔で会釈する。
「あ、佐藤さん」
うっ。呼び止められた…
「なんですか?」
「佐藤さんて、小栗くんと仲良いんですか?」
「え?…いえ、良くはして頂いてますが、仲がいいとかそういうのでは…」
「ふーん。そうなんですね!いや、何か飲み会の途中、小栗君がいつになく楽しそうに笑ってたでしょ?」
ドキッとした。
思い当たる節があったから。
飲み会の途中、テーブルの端の醤油を取ろうと小栗さんが手を伸ばした時…
まあ、必然的に俺にくっつく形になって…その時に、テーブルの下にあった手が俺の太腿の上に乗せられたんだよね。
それで俺が顔を真っ赤にしたもんだから…
それを見た小栗さんが、ちょっとはにかんで笑ったんだ。
あんな顔、仕事中には決して見せないから…
あれを見られていたのかな。
「えっ?あ、そうですかね?普段の小栗さんの事が分からないので…すみません」
「いえ、ちょっと珍しいなぁと思っただけなので」
そしてニコリと笑顔を見せた。
「あっ、小栗くん!」
河野さんが突然、俺に向けたのとは違う笑顔で俺の後ろを見た。
「河野もここに居たのか?…佐藤君、もう会計終わって、皆店の外に移動してるから」
小栗さんはそう言って、俺のビジネスバッグを持ち上げて見せた。
「あ、すみません!」
小栗さんに駆け寄ってバッグを受け取ろうとしたけど、小栗さんは俺のバッグを離してくれなかった。
何で??
「そっか!皆を待たせたら悪いから、早く出よう!」
河野さんが小栗さんと俺の背を押して間に入ってきた。
あれ?
河野さん、トイレ待ちじゃなかったのかな?
…ま、いいか。
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