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帰り道 …1
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店の外に出ると「二次会どうする?」って話で盛り上がっていた。
二次会…どうしようかなぁと思っていたら、小栗さんが皆の輪に入ってこう言った。
「すみません。佐藤君が緊張疲れで悪酔いしたらしいので、駅まで送って来ます」
え?俺、体調悪くないよ?
小栗さんは俺を見て、他の人に分からない程度にニヤリと口端を上げた。
あ。嘘ついて二次会に出ない気だ…
バッグを持ってくれたのも、そういう事かな。
「す、すみません。お先に失礼させていただきます。今日はありがとうございました」
慌てて小栗さんの嘘に乗る。
「おー、大丈夫?気を付けて帰るんだよ?また次の仕事、宜しくね!」
課長さんが何の疑いもなくそう言ってくれたので、俺は皆に頭を下げてから小栗さんと駅の方向に歩き出した。
皆から離れてから、俺は「ふふっ!」と吹き出した。
「小栗さんでも、あんな嘘付くんですねっ」
「たまには良いだろ?」
優しく微笑んでくれたその顔は、ハリウッドオーラが消えかかった、俺の好きな笑顔だった。
「それにしても、佐藤君のカバン重いね」
「あ!持たせたままですみません!パソコンとか大量の資料とか…色々入ってるんです」
俺が小栗さんの手からバッグを受け取ろうとすると、スルリとかわされた。
「いいよ。佐藤君ちまで持って行ってあげる」
「っ!」
うちまで?
うちまでって……そういうこと、なのかな?
「あ、ありがとうございます…」
にやける顔を見られたくなくて、俯いた。
もうすぐ駅って所で「小栗くん!」と後ろから声が聞こえた。
嫌な予感…
振り向くと、河野さんが小走りでやって来るのが見えた。
「やっと追いついた」
そう言って河野さんはポンっと小栗さんの肩に手を置く。
あ…今、小栗さんの腕に胸を押し付けただろ?
……。
いやいやいや、俺に胸が無いからって、そんな事ひがんでどーすんだ。
胸が大きいから、たまたま当たっただけかも知れないし。
「私も帰るから、一緒に行こう」
「珍しいな、河野が二次会に行かないなんて」
「うん。ちょっと用事があってねー」
…あーあ。
小栗さんと二人で帰れると思ったのにな。
「あのー、二人は同期とかなんですか?」
とりあえず、二人だけの空気にされたくなくて話しかけてみる。
「うん。そうだよ。同期。大学も一緒なのよ」
河野さんがニッコリ笑って返事してくれた。
「え?あ、そうなんですかー。どうりで、仲が良さそうだなって思いました」
そっか…
大学から一緒なんだ。
つまり、10年くらいも前から知り合いってこと?
俺には入れそうにない雰囲気はここから来てるんだ…
胸が痛い…
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