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帰り道 …2
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改札を抜けて、ホームまで河野さんは着いて来た。
「あれ?河野、こっちじゃないだろ?」
「うん。用事があるって言ったでしょ?ところで二人は同じ方向なの?」
「ああ、俺が○○駅で、佐藤君がその先の△△駅だよ」
「そっかー」
すぐ来た電車に乗り込んで、3人でドア付近に立つ。
う…河野さんも同じ電車か…
「そう言えば、佐藤さん、体調大丈夫?」
「え?あ、はい!そんな大した事ないんですけど、ちょっと疲れてしまって…」
「あー。昨日も遅くまでやってたみたいだもんね。小栗くん、なかなか事務室に戻って来なかったし。ゆっくり休んでくださいね」
「はい。ありがとうございます」
河野さんに、心配してもらったけど、なんだか素直に感謝する気分にはなれなかった。
「ところで、河野はどこで降りるんだ?」
「私?○○駅だよ。小栗くんと一緒」
「ふーん…」
えっ?同じ駅??
小栗さんがちょっと無表情になった。
何を考えてるのかな。
そうして○○駅に着いた時、当然のように「さ、降りるよー」と、河野さんが小栗さんの腕を引いた。
あー…どうしようもない。
ここで降りないと変だもんね。
小栗さんは河野さんの手を払って、今まで持っていてくれたバッグを俺に返す時に、河野さんに聞こえないよう小声で言った。
(ごめん。あとで電話する)
言ったというか、ほぼ口パクだったけど。
俺は頷いて「ありがとうございました。お疲れ様でした」と二人に挨拶した。
ドアが閉まって、無表情の小栗さんと手を振る河野さんの並んで立つ姿を見て、また胸がチクンと傷んだ。
やっぱりこの二人、お似合いだな…
ドアに映る自分を見る。
こんなちんちくりんの俺が小栗さんの隣に立っても、全然絵にならない。
それ以前に、男だし…
はぁ…
とりあえず、家に帰って小栗さんの連絡を待とう。
そうして家に帰ってからしばらく待ったけど、なかなか小栗さんから連絡がない。
"無事に帰り着きましたか?"とLINEを送った。
すぐに既読になったけど、返事はない。
電話もしてみたけど、留守電になるだけだった。
結局、その日小栗さんから連絡が来ることはなかった。
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