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電話の向こう
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なかなか寝付けなかったけど、いつの間にかベッドに寄りかかって眠ってしまってたようだ。
付けっ放しのテレビから、朝が来た事が分かった。
スマホに手を伸ばして着信を確認する。
特に代わり映えのない待受画面。
小栗さん、どうしたのかな?
既読になったって事は、事故とかそういうのじゃないと思うけど…
もしかして、あれから河野さんと一緒にいたんだろうか。
気になるけど、昨日LINEもしたし、着信も残したし…
これ以上連絡して、しつこいって思われるのも嫌だ。
はぁ。
考えてみたら、誰かの事でこんなに色々考えるのって初めてかもしれない。
あれ?俺、恋愛の経験値低い?
確かに、今までの恋愛は、向こうから来るのを受け止めるばかりだった…
それに俺、結構すぐ行動に移すタイプだから、こんなに悩む事はなかった。
…今までは。
小栗さんとの関係は…どうやって先に進んで良いか、分からないよ…
夕方になって、スマホの振動で目が覚めた。
どうやら、うたた寝しちゃってたみたい。
手探りでスマホを探して画面を見ると…小栗さんだ!
慌てて通話ボタンを押す。
「もっ、もしもしっ?」
『佐藤くん?あの…申し訳ない…。昨日、連絡するとか言っておきながら今まで連絡せずに』
「あ…いえ…。あの…あれから何かあったんですか?…河野さんは…」
『いや実は昨日…多分飲み会の時なんだけど、河野の携帯と俺の携帯が入れ替わってたみたいで。…あ、同じ機種だから、テーブルに置いた後、取り間違えたみたいでさ。
で、さっきやっと手元に戻ってきたんだ。
それで今まで連絡出来なかった。…本当にごめん。
あぁ、河野とは…駅で別れたよ?』
そっか。
河野さんとは駅で別れんだ…
「そうですか…何かあったかと思いました。何もないなら、それでいいです」
河野さんの携帯と入れ替わって、さっき手元に戻ってきたって言うことは…
さっき、会って交換したのかな?
二人が会ったんだと思うと、胸がちくりと痛んだ。
昨夜からずっと一緒にいた…とかじゃ無いよね?
何か、黒い物が俺の中に渦巻いて来る。
『本当に申し訳ない。今度、埋め合わせするから』
「んー。…じゃあ今度、美味しい物、奢ってください」
『はは。それくらいお安い御用だよ。……あのさ』
「はい」
『今から、会えない?』
っ!
嬉しい!俺も会いたい!
俺が「会いたいです」って口に出しかけた時、コンコンと何かを叩く音がした。
『あ…ちょっと待って』
小栗さんがそう言った後、ウィーンと機会音がした。
静かだった通話口から、外の喧騒が聞こえてくる。
車?車からかけてくれてるのかな?
今のはパワーウィンドウを開けた音っぽい。
スマホが離されたのか、遠くで小栗さんと誰かが話している声がした。
内容までは聞き取れなかったけど…
相手のその声と話し方は、河野さんのようだった。
ズキン、ズキンと心臓の音が響く。
『あ、ごめんお待たせ』
小栗さんが電話に戻ってきた。
再び「ウィーン」と、おそらくウィンドウを閉める音がする。
それと同時に「また明日ね」と言う声がした。
あぁ…心臓痛い。
今の、河野さんの声だ。間違いない。
『えと…今から…
「ごめんなさい!ちょっと用事があって、今日会えないんです。あの、すみません」
『あ。そっか。いや、こちらこそ突然悪かった。…ん、それじゃ…また』
「はい。また」
河野さんの声がして、頭がカッとなった。
それを知られたくなくて、咄嗟に嘘を着いて電話を切っちゃった。
「はぁー…」
俺、小ちゃいな…
今まで河野さんと会ってて…明日も会うんだ。
携帯が入れ替わってたって、本当かな?
だって…昨夜、既読になったよね?
河野さんが、勝手に着信を見たんだろうか?
あれ?
もし入れ替わっていたのが本当の話だとして…見られたのは、あのLINEだけ?
やり取り、全部見られてるかも?
急に変な動悸がして来た。
せっかく小栗さんから電話をもらったのに…
もう俺、どうしたら良いんだろう。
その日の夜、シャワーの時に気付いたけど、小栗さんからもらったキスマークはすっかり消えてしまっていた。
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