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ライバル?
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「俺…小栗さんとはプライベートでも仲良くしてもらっててね。
なんか…いつの間にか、惹かれてた。
でも、男同士だから、気持ちも伝えられないし、どこまで踏み込んで良いのか分からなくて…」
グラスを取って、ビールで喉を潤した。
「…俺、どうしていいか分からないんだ」
それから、身体の関係については触れないようにして、河野さんのことを…口紅のこと、携帯入れ替えのこと、多分小栗さんが好きな事…など色々聞いてもらった。
「こんな小さい事で、悩むなんて、…俺かっこ悪ぃよな」
「え?かっこ悪いなんて事ないですよ!」
それまで相づちしか打たなかったアキちゃんが、デザートのスプーンを置いてそう言った。
「恋なんて、悩んでナンボです!悩まない人なんていないですから。
それに、小さい事なんかじゃないです!ライバル登場なんて片思い中においては最大の不安要因ですからね。悩んで当然ですよ」
「ライバル…?ていうか俺、ライバルにすらなれる自信がない。あっちは女で、俺は…男で…」
俺は向こうから見たら何だろう…
「えー?私からしてみたら、河野さんはライバルの土俵にも立ってないと思うんですけどね…。
それにしても、その女。気に食わないですね」
アキちゃんがグラスに残っていたオレンジのカクテルをクルクル回した。
「口紅もそうだし、携帯もその女が仕掛けた事だと思います」
「仕掛けた?」
「口紅は、誰かに見せつけるためにカップホルダーに置いたんじゃないでしょうか。わざとじゃなきゃ、そんな所に口紅入らないですよ。
小栗さんが、助手席に乗せるかも知れない女に対して牽制したんです」
「そう、なのかな?」
「携帯だって、わざと入れ替えた可能性ありますよね?佐藤さんのLINEが既読になったのだって変ですもの…他人の携帯を見るとか、普通ならしませんもん」
「う…ん」
アキちゃんがプリプリしながらカクテルを飲み干した。
「まっ、向こうはライバルが出てきたと思って焦ってるんでしょうねぇ。小栗さんに別の女の影を見て…焦って色々仕掛けてるんじゃないですか?」
アキちゃんがフフッと笑った。
「別の…女?」
「佐藤さんの事ですよぅ!佐藤さんの存在で、小栗さんに何か変化があったんじゃないですかね?河野さんはそれに気づいたんですよ」
「俺の、存在?」
「んー…残念ですけど、恐らく河野さんは当たりつけてますよ。相手が佐藤さんだってこと。
トイレの前で待ち伏せとか…怖いわ〜」
アキちゃんがブルブル震える真似をした。
「まっ、とにかく河野さんの事は置いといて…佐藤さんは自信持って行動して良いと私は思うんですけどねっ」
「自信は…持てないよ。だって俺…男で…」
「うーん。そこ悩みますか。やっぱり気になりますかねぇ。…私は大丈夫だと思うんだけどなぁ……」
アキちゃんが「小栗さん何やってんだか」みたいなことをボソリと呟いた。
どういう意味だろ。
「あっ!そうだ。今度デート誘った時に、手とか握ってみるのはどうですか?拒否されなかったら、男としても脈ありじゃないですか?」
「手?」
困った…
手…は、ある意味、一番最初に握っちゃいましたけど?
って言うか、それ以上も…やったワケで…
「え?」
アキちゃんが真っ赤になった。
「え?」と、つられて返す。
「手っ…もう握ったんですかっ?」
真っ赤な頬に両手を当てて、今にも叫びそうな顔をした。
「えっ?いや?…えっ何で?」
「佐藤さん…分かり易すぎです…。…ハァ…
ていうか、手を握れたんなら、小栗さん、すでに心を開いてるってことじゃないですか?佐藤さんが男とか関係なく。ね?自信持って良いですよ!」
「そう…なのかな?」
「そうですよー。もう告白しちゃえば良いのになぁ」
アキちゃんがニコニコと、本当に嬉しそうな顔をした。
告白っ⁈
「告白とか…そこまではまだ自信持てない…」
「えー…。とにかく、私は佐藤さんのこと応援していますから!河野さんがまた何か仕掛けて来たら教えてくださいよ?女との戦い方、教えますから!」
「はは。そりゃ心強いね。…うん。本当に、ありがとう」
「こちらこそ!…私に相談してくれて…嬉しかったです」
「うん」
それから二人でしばらく壁に埋め込まれている水槽を眺めた…
これ、癒されるなぁ…
恥ずかしかったから口には出せなかったけど、今日はアキちゃんの存在に心から感謝した。
完全に不安とか、河野さんへの嫉妬とかが消えたわけじゃないけど…
自信を持っていいかも、と思えたのは、大きな前進な気がした。
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