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着信 …1
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次の日の火曜日の夜、河野さんから着信があった。
なんだろう。
水族館のことかな…
「はい。佐藤です」
『あ、佐藤さん?今、大丈夫?』
「はい。大丈夫です」
『水族館の事だけど、小栗くんに伝えたら私も行っていいって言われたから』
河野さんが嬉しそうに声を上げる。
あぁ、小栗さんOK出したんだ。
まあ…そうだよね。
都合良く断ってくれないかな?とかちょっと期待してた俺が恥ずかしい。
「そうですか…」
『うん!それでね?待ち合わせなんだけど、11時くらいに小栗くんが私達を車で回収して、水族館でランチしてから中を回ろうと思うんだけど…どうかな?』
「分かりました。あ、あの…」
俺は河野さんに伝えなきゃいけないことがある。
「その…待ち合わせの前に、ちょっと時間をもらえませんか?」
『え?』
「あの…水族館に行く前に、俺、河野さんに話したいことがあるんです。そんなに時間は取らせません。ただ、小栗さんには内緒で…」
言った!言えた!
もう、逃げられないぞ、俺。
河野さんは、少しの間無言になった。
『…分かりました。詳細はLINEでいいかしら?』
「すみません。ありがとうございます」
その後、河野さんの声が少し遠くなって、誰かに話しかけるのが聞こえて来た。
『あ、佐藤さんね、用事があるから、現地集合がいいそうよ?…え?…さあ?』
電話の向こうで誰かの話し声がする。
微かに聞こえるこの声…もしかして…
『……あ、佐藤さんごめんなさい。今、小栗くんと夕飯の帰りで…。小栗くん、何か伝言ある?……いいの?
…あ、じゃあ佐藤さん、そう言うことで、また連絡するわね』
そう言って、電話は切れた。
河野さん、小栗さんと一緒にいたんだ。
二人でどんな風に話したのかな…
って、気にしても仕方ない。
開き直って、水族館楽しめば良いじゃないか!
そう言い聞かせてベッドに入ってゴロゴロしていたら、スマホに着信があった。
ディスプレイの表示を見て、胸がドキンと跳ねる。
小栗さん、だ。
あぁ、何を言われるんだろう。
ドキドキしながら、電話に出た。
「はい。…佐藤です」
『お疲れ様。小栗だけど…遅くにすまない』
「いえ…まだ起きてましたから」
小栗さんの声のトーンがいつもより少し低い気がするのは、きっと気のせいじゃない。
小栗さんがしばらく黙ってから、話し出した。
『さっき河野から聞いたんだけど。水族館、河野も誘ったんだ?』
うっ…河野さん、本当に俺が誘ったって事にしたんだ。
「いや、あの…実は、金曜日に階段で水族館の話をしていたところを河野さんに聞かれたみたいで、河野さんが水族館に行きたそうにしていたので…それで…」
小栗さんが小さく息を吐いた。
『そうか。河野が何かわがまま言ったんじゃないか?…あいつの行動力には大学の時にも驚かされる事があったしな…』
小栗さんが、河野さんとの大学の時の話をした事に、ズキンと胸が痛んだ。
俺の知らない二人が、そこにいる。
「あいつ」って言う言い方にも、なんかモヤモヤするし。
「その、すみません…」
『いや。佐藤君が謝ることじゃないよ。ま、佐藤君が誘ったなら仕方ないか…』
小栗さんは独り言のように、そう呟いた。
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