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決戦の待ち合わせ
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土曜日。水族館に行く日。
出かける時には昨日からの雨は上がっていて、どんよりとした雲は薄くなっていた。
水族館の最寄り駅で河野さんと待ち合わせて、水族館まで一緒に歩くことになった。
約10分の距離。
そこで、河野さんにもう応援出来ない事を伝えるんだ。
待ち合わせ時間の少し前、二人とも同じ電車で到着したようで、改札を出たところですぐに会えた。
河野さんは紺のニットカーディガンに白っぽいワンピース、ショートブーツを合わせている。
いつものカチッとしたスーツとは違って、ガーリーって言うのかな?女性らしい感じだった。
「こんにちは。あら、佐藤さんって私服だとさらにカッコ良いわね。アイドルグループにいそうな感じ」
河野さんが開口一番で俺を褒めたので、今から河野さんに向かい合おうとしていた気持ちが少し怯んでしまった。
ちなみに俺は、7部袖のパーカーに細身のパンツ。
細めの革を巻き付けたようなブレスレットは、確かにアイドル真似しました。
「ありがとうございます。河野さんも私服、素敵ですね」
そう言うと、嬉しそうに微笑んだ。
「小栗くんもそう言う風に褒めてくれる人だったら良いのになぁ。ま、つれないところも良いんだけどね」
河野さんが水族館に向けて歩き出した。
その横を着いて歩く。
「で?話って?」
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
負けるな、俺。
「あの、単刀直入に言います…
俺、河野さんと小栗さんとの事、これ以上は応援出来ません」
「……ふーん」
あれ?
思っていた反応と違う。
驚かない…と言うか、俺が言うことを予想してたような。
「あの…」
「どうして突然そんな事を?」
河野さんが口元だけに笑みを浮かべて俺を見た。
その複雑な顔を見ていたら、それまでは適当に誤魔化そうと思っていた気持ちが、何処かに行ってしまった。
ちゃんと、応えないと。
「俺…俺も実は、小栗さんの事が…」
「ストップ」
河野さんが俺が言おうとしたことを遮った。
「それは、聞きたくないわ」
河野さんが前を向いたままそう答えた。
しばらく黙って二人で歩く。
「そうね。もう、応援はいいわ」
河野さんが立ち止まった。
「私ね?出張の帰りに、小栗くんに告白したの」
え?
こくはく?
いや…そっか…告白、したんだ。
ズキンと胸が傷む。
「あの、それで…?」
「返事は保留で、今日、返事をもらえることになってるの」
そう言って、俺の方を見て微笑んだ。
心の読めない笑顔。
「そう、なんですか…」
二人でまた歩き出す。
保留?
どうして保留なんかに?
もしかして、小栗さんも河野さんのこと気になってたのかな?
俺のために…俺と約束の水族館に行くために、今日まで返事を保留にしたとか?
あり得る。
優しい小栗さんなら。
昨日、様子がおかしかったのも、このせい?
うわ…
どうしよう。俺、どうしよう。
若干、パニックになりかけた時、待ち合わせ場所の水族館の入り口が見えた。
遠目でも分かる。
キラキラオーラを放つ、小栗さんが立っているのが。
「とりあえず、お互い今の話は忘れて、水族館楽しまない?私、この水族館に来るの、初めてなの!」
河野さんが楽しそうに笑って、小栗さんに手を振った。
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