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水族館 …1
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「小栗くん!おはよ!待った?」
「おはよ。いや、今来たとこ」
小栗さんはグレーの上質そうなニットにジーンズ。リングが着いている革のネックレスがキラリと光る。
今日も、雑誌から飛び出したような格好良さだ。
「私と佐藤さんは駅で会ったの」
「…へえ」
河野さんがニコリと微笑んだ。
小栗さん、河野さんの前ではハリウッドオーラは消さないのかな?
それとも、外だから女よけにオーラ出してんのかな?
「おはようございます」
俺も負けずに微笑んだ。
凹むのは俺の勝手で、楽しもうとしてる二人に失礼だよね。
俺も、楽しまなきゃ。
「おはよ」
小栗さんが微笑みを返してくれて、少し肩の力が抜けた。
いつもの…職場での、いつもの小栗さんだ。
それから3人でランチを食べに移動した。
ここは、小さな島全体がアミューズメントパークみたいになっているところで、水族館の他に色々なレストランや遊園地など多彩な施設が凝縮されている。
食事中、今回のジョブが無事に立ち上がった話を聞いて、ここだけの話、今回のはもうすぐ発売されるスマホの一部だよって教えてもらった。
へえー。自分が何に関わったのか知れるのって、嬉しいな!
あと、3人とも、ここの水族館は初めてだという話になった。
何だか、小栗さんと河野さんが余所余所しい気がしたけど…そこは気付かないフリをした。
ランチ後に水族館に入った。
蒸し暑い外とは違って、館内はひんやり気持ちいい。
途中、イワシの群れを観れる巨大な水槽があって、あまりの綺麗さに、俺は水槽に張り付いた。
「わあ!すごくきれい!」
後から来た河野さんが、俺の隣に立った。
「きれいね…」
イワシが踊るように群れをなして泳ぐ。
河野さんと二人で並んでぼおっと眺めてると「次行くぞ」と言って、小栗さんが俺の腕を引いた。
そんな小栗さんを見て、河野さんが「ふーん」と言いながら着いて来た。
その後も、同じように後から来た河野さんが俺にくっ付いて水槽を眺めるって言うのを繰り返した。
ショーを見る時は、俺が真ん中に座った。
やっぱり、河野さんと小栗さんって何か距離がある?
ショーが始まる前、そっと小栗さんの横顔を盗み見た。
もし、河野さんと小栗さんが付き合う事になったら、こうやって出かけることは叶わなくなる…よね?
だって、河野さんは俺の気持ちを知ってるみたいだから、小栗さんが俺と仲良くするのを良く思わないだろうし…
視線を感じたのか、小栗さんが俺の方を向いた。
そして「ん?」と、微笑みながら首を傾げた。
「あ、なんでもないです」
もしかすると、今日は最後のお出かけになるのかな?
…いや、それはここを出るまで考えないようにしよう。
それからすぐに始まったショーに、俺は意識を向けることにした。
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