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ジェットコースター …1
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小栗さんが会計を済ませて、店の外で俺と河野さんにそれぞれ手提げの袋を渡す。
「ありがとうごさいます!」
「ありがと!良い記念になった!」
手にした袋を見下ろす河野さんの顔は、笑ってるけどなぜか泣き出しそうな感じがした。
え?…なんで?
「あの、河野さん?」
思わず声をかけると、河野さんがバッと俺の方を見た。
「そうだ!ジェットコースター行こうよ!」
「え?ジェットコースター?」
泣きそうだと思ったのは気のせいだったみたい。
それより突然、どうしたのかな?
「パンフレット見た?海の上にレールが走ってるジェットコースターがあるの!私、それがすごく気になる」
「え?海の上⁈乗ってみたいです!」
「でしょー?」
「小栗さん!行きましょう!」
俺が小栗さんを見ると、小栗さんが首を横に振った。
「いや…俺はいい。二人で行ってこいよ」
「プッ!佐藤さん、あのね。小栗くん、絶叫系が苦手なのよ」
河野さんが笑いを堪えながらそう言った。
ええ⁈意外!!
小栗さんが眉間にシワを寄せて「苦手とかそう言うんじゃない」と呟いた。
「大学の時ね、仲良しのグループでディズニーランドに行ったんだけど、小栗くん、絶叫系には1つも乗らなかったもん。ふふふ」
「え?そうなんですか?」
「…いいから行けよ。俺はその辺で待ってるから」
そう言って、俺と河野さんのお土産の袋を取り上げた。
「じゃ、佐藤さん、行こう!」
「え?あ…はい。小栗さん、行ってきます」
小栗さんは片手を上げて俺たちを見送った。
て言うか…勢いに流されて、二人でジェットコースターに向かってるけど…なんでこうなった⁈
なんで河野さんと二人でジェットコースターなんかに乗らなきゃなんないんだ。
…でも、海の上を走るコースター…気になるよね。
うん。気になる。
「あの…小栗さん、置いて来て良かったんですかね?」
「いーの。小栗くん、本当に苦手っぽいから」
河野さんが楽しそうに笑った。
小栗さんが乗らないの分かってて、俺を誘ったのかな?
俺と二人になるため?
…まさかね。
しばらく歩くと、ジェットコースターが見えてきた。
乗り場の向こうは、すぐ海が広がっている。
パンフレットで確認すると、レールの一部が海の上を走るようになっている。
すごい。こんなジェットコースターあるんだ。
待ち時間は5分と表示されていた。
曇りだから短いのかな?普段を知らないから何とも言えないけど。
乗り場の列に並んでジェットコースターを眺めていたら、突然、河野さんが真面目な声で話し始めた。
「私ね……告白の返事、今日もらうって話したでしょ?」
「え?…あ、はい」
「それね、返事を保留にしたのは小栗くんじゃなくて、私なの。私が保留にしてもらったの」
「…え?」
突然、何?
って、告白の返事…小栗さんが保留にしたんじゃなかったんだ。
でも、どうして河野さんが保留に?
「私ね…私の気持ち知ってもらった上で、こうして一緒に出かけてみたかったんだ。
これは、私のわがままなのよ」
わがまま?
「あの…よく意味が分からないんですけど…」
「はは。分からなくていいわ。
あーあ。一度でいいから女として見てもらいたかったなぁ」
河野さんが空を仰いだ。
女として…見られたことがないの?
いや。でも…
「あの…でも前に一度、小栗さんと寝たって。あれは、その…」
「え?…ああ、そう言えば私、佐藤さんにそんな思わせ振りな事を言ったわね。ふふ。あれ、酔った勢いで、手をつないでうちまで送ってもらったの。それだけの話よ。…って、変なこと言わせないでよ」
河野さんが、俺の肩をバシッと叩いた。
手をつないだだけ?
そっか…そうなんだ。
ヤった訳じゃなかったんだぁ…
「ちょっと…。あからさまにホッとするのやめてくれる?
…まぁ、いいわ」
河野さんが厳しい顔をして、腕を組んだ。
河野さん、どうしたんだろう?
こんな話始めて…
河野さんの横顔を眺めてみたけど、その表情からは答えは分からなかった。
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