アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ジェットコースター …2
-
それからすぐ、俺たちの順番になって、二人で並んでコースターに乗り込んだ。
うわー。ドキドキする!
なんと、最前列です。
ガクンと揺れて、コースターが動き出した。
「佐藤さん、今日はありがとね」
河野さんがまた話しかけて来た。
「え?」
「今日は最後の良い思い出になりそう」
「最後って…」
ガタガタと音を立てながら、コースターがレールを登り始めた。
「私、長いこと小栗くんの事を見てた。小栗くん、フラフラしてたから、いつか私にもチャンスがあるんじゃないかと思って、ずっと狙ってたの。
職場が離れた時に諦めようと思ったけど、出来なかった。だから東京に戻ってくると聞いた時は本当に嬉しかったわ。
…でも、帰って来た小栗くんは、私の知らない小栗くんだった。
誰も寄せ付けない雰囲気にもビックリしたけど、佐藤さんに向き合う時だけ違う笑顔になる。あんな小栗くんは見たことないわ。
今日もそう。本当に見ていて辛い…」
「……」
「辛いけど…でも、来て良かった。
あんな笑顔や行動見せられたら、キレイに諦められそうだわ」
「え?」
諦める?
「わわ!すごい!下見て!海!」
河野さんは、それまで何も話してなかったみたいに、話題を変えた。
コースターが頂上付近に来た。
「小栗くんの事、好きなんでしょ?」
「…はい」
隠すつもりもない。
俺は小栗さんが、好きだ。
河野さんの告白にドキドキしているのか、ジェットコースターにドキドキしているのか、心臓がうるさかった。
「そっか。…今まで…」
え?
「…〜〜!!」
最後、河野さんが謝ったような気がしたけど、それはコースターが下り始めた轟音でよく聞こえなかった。
「はあ〜!楽しかった!」
河野さんがスッキリした顔で階段を降りていく。
「意外と長かったです…」
俺は足がフワフワして変な感じになっていた。
「なによ。情けないわね〜。私の周りの男達ときたら…。さて、小栗くんが待ってるから急いで戻るわよ!」
河野さんがそう言って、小栗さんの待っている方へ早足で歩き出した。
俺も慌てて後を追う。
さっき、コースターの上で河野さんが言ったこと…
あれって、今日、最後の思い出作りに水族館に来たって事だよね?
つまり、小栗さんにフラれる前提で。
それで俺と小栗さんを見て…
「ほら、小栗くん待ってるわよ。…あ、あそこにいた!行くわよ!」
色々考える間も無く河野さんにグイグイ腕を引かれて、小栗さんのところに着いた。
「お待たせー!超楽しかったわ!ねっ?佐藤さん」
「えっ?あ、はい!楽しかったです!」
河野さんがパッと俺から手を離した。
小栗さんが俺たちを見て渋い顔をして頷いた。
「さて、最後はイルカ見に行こう!イルカミュージアム!」
河野さんが俺と小栗さんの間に入って、歩き出した。
ミュージアムに入る手前で、前から来た女子大生っぽい3人組が、俺たちを見て「キャ!」と声を上げた。
「見て!あの人たち、超カッコいい!」
「レベル高っ!芸能人みたい」
「あの女の人、連れかなぁ?良いなぁ!どっちの彼女だろ!」
小声で話してるつもりのようだったけど、全部筒抜けだよ…
河野さんが「ふふっ」と笑って、俺と小栗さんの腕を取って組んできた。
「今の子達の、聞いた?私、すごい気分良いわ!」
そう言って俺と小栗さんを見て微笑んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
153 / 559