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告白の返事
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それからすぐ河野さんが戻って来たので、3人で奥へと進んだ。
アーチ型の水槽を抜けてミュージアムの奥の部屋に入ると、大きな筒状の水槽が現れた。
筒状の水槽の周りをぐるっと歩けるようになっている。
室内の証明は薄暗く落とされているけど、水槽には上から自然光が降り注いでいて、水槽を浮かび上がらせるようにゆらゆら光を集めていた。
その中で、白いイルカが気持ち良さそうに泳いでいる。
とても幻想的な光景。
「白いイルカ!可愛い…」
「わあ〜…すごいですね」
俺と河野さんが水槽に張り付く。
イルカが愛想を振りまくように泳ぐのをしばらく見つめていたら、小栗さんが俺たちの間に入って来た。
「!!」
横に並ばれた時、小栗さんに手を取られて…
ぎゅっと握られて、すぐに離された。
びっくりして小栗さんを見ると、小栗さんは水槽を見たままこう言った。
「河野。あの時の返事をしよう」
え…今っ?
河野さんの表情が固まった。
それから小栗さんは、淡々とその言葉を口にした。
「俺は、河野の気持ちには答えられない」
河野さんは無言のまま、イルカを目で追う。
いや、水槽をただ眺めてるだけかも…
少し間を置いてから「そう」と、呟いた。
小栗さんが河野さんの方を向く。
何だか、無表情で、とても…怖い。
「あと、お前。俺に佐藤君のこと、嘘着いたろ?」
「……なんのこと?」
「…まあそれはいい。…もし、佐藤君にも何か酷いこと言ってたりしたら、俺はお前を許さないからな」
河野さんは、相変わらず水槽に目を向けたまま、口を横にぎゅっと結んだ。
約10年も小栗さんの事が好きだった河野さん。
その告白がフられる場面を見て、更になぜか小栗さんに攻められてるのを見たら、急に可哀想に思えて来た。
「あ、あのっ、小栗さん!俺、別に河野さんに何かされたりしてないですよ?大丈夫です!…だから、その…」
「佐藤君は黙ってて。
……河野、なんでこんな事をした?」
河野さんは目をつぶって一つ息を吐いてから、小栗さんの方を見た。
「あなたの事が好きだからでしょう?」
「だからと言ってー
「だからと言って、やっちゃいけないことがあるのは分かってるわよ。でもね?あんた達見てるとイライラすんのよ」
河野さんはその鋭い視線を俺にも寄越した。
「なんなのよ。あんた達がハッキリしないからいけないんでしょう?少なくとも私は今までずっと本気でぶつかって来たわよ?それのどこがいけないの?中途半端な関係で、周りを惑わしてんじゃないわよ。そんなんだから、壊したくもなるわよ」
……河野さん。
そんなことを考えていたの?
だとすると、好きなのに本気でぶつかってなかった俺のこと、気に入らなかったのかな?
だから、色々俺に言ってきたの?
言われたとおり、俺たちの関係はハッキリしない関係だ。
アキちゃんとか、河野さんとか…そう言う立場の人からしてみたら…確かに、酷いことをしてるのかもしれない。
俺は何も言えずに、俯くしか出来なかった。
突然、小栗さんが何も言わずに俺の手を取った。
えっ?
ちょっと…人前で!
て言うか、河野さん見てるし!
俺の手をギュッと握った小栗さんは、ゆっくりと河野さんに言った。
「望み通り、ハッキリしてやるよ」
河野さんが目を見開く。
小栗さんが俺の手をグイッと自分に引き寄せたかと思ったら、俺の唇に…キスをした。
「!!」
お、小栗さんっ⁈
見せつけるようにしっかりと合わされた唇は、すぐに離されたけど…
俺はびっくりして、動くことも声を発することも出来なかった。
「分かったか?ここからは二人の問題だ。
もう、邪魔するな」
小栗さんが先程買ったマグカップの袋を河野さんに差し出す。
河野さんは無言でそれを受け取った。
「行くぞ」
小栗さんはそう言って、俺の手を引いてミュージアムを後にした。
河野さんの様子が気になったけど、周りの人の目線が気になって、俺は振り向くことが出来なかった。
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