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【番外編】 小栗雅治の独白 3
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作業4日目の夜。
佐々木さんと佐藤君から業務報告を受けた後、佐々木さんがトイレに立って、俺は佐藤君と休憩室で二人になった。
缶コーヒーを飲み終わって、佐藤君の空き缶も一緒に捨てようとした。
その時、差し出された空き缶を持つ手に心を奪われてしまった…
あの飲み会での感覚が蘇る。
…もう一度、触れたい。
そう思った時には、その指に触れてしまっていた。
やっぱり、良い触り心地だ…
何事もなかったかのようにやり過ごそうと思ったが…
少し触れた事で、逆にもっと求めたくなってしまった。
触れるだけじゃない。
もう一度、あの日のように手をつないでみたくなってしまった。
あの感覚は、何かの気のせいだったと。
いや、気のせいに違いないのだ。
それを確認しないと、俺の中でのモヤモヤしたものが引いてくれそうにない。
だけど…
そんな事出来るわけないじゃないか。
あれは事故のようなもの。
手に触れた事について咄嗟に言い訳を口にしてその場を誤魔化した。
だが、佐藤君は目線を泳がせていたので、きっと不審がられたのだろう。
俺、何やってんだか。
ハァ…もう早いとこ忘れよ。
なんて思いは、次の日あっさりと砕け散った。
最終日。
プログラム組み込みが無事に終わり、課長と俺と佐々木さん佐藤君の4人で、打ち上げをすることになった。
そして、打ち上げの店に移動する途中のタクシーで、佐藤君の隣に座った時だ。
服越しでも身体が触れると、あの時の熱を思い出してしまう。
俺、やっぱどうかしてるわ。
途中、車が揺れて、寄りかかられた時の華奢さに、つい支えたい甘やかしたいと言うような不思議な感覚になった。
なんで、ヤローにこんなこと…
…あぁ!そうだ。
仔犬を相手するような?
ヨシヨシと撫でたくなる感じに似てる。
自分の中に渦巻くものを、そう結論付けて、飲み会に臨んだ。
飲み会の後、課長と佐々木さんが夜の街へと消えて、俺たちは二人になった。
それまではすぐ帰るつもりだったが、別れ際になって佐藤君が淋しそうに下を向いた。
その様子に、つい構いたくなってしまった。
もう一軒行こうか?と提案したら、すごく嬉しそうに笑う。
あークソ、可愛いな。
人を寄せ付けないようにしてる俺は、彼から見たら怖いタイプなんじゃないかと思うけど、そんな俺に、媚びたりするような作りものじゃない笑顔を向けてくれる。
心が綻ぶ。
うん。ホント仔犬みたいだ。
…もっと喜ばせたい。
そうしたら、もっとこの笑顔を見せてくれるかもしれない。
この時「触れたい」だけだった欲求に、「笑顔を見たい」と言うのが加わった。
こうやって、この後どんどん求める内容が増えていく事を、この時の俺が気付くはずもなく…
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