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【番外編】 小栗雅治の独白 20
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4月。
結局、東京に異動して来た。
新たに設置されたチームが、今までの仕事を引き継ぐものだったから、迷う事なく異動を受け入れた。
佐藤君とはたまにLINEしたり、食事をしたり、順調に仲を育んでいた。
もし俺らの状況をヤマに話したら、確実に驚かれるだろう。
昔の俺なら、とっくに身体の関係を求めてる。
こんなに彼女を大事にした事はない。
4月半ばの金曜日。
本社に出張で来ていた加藤と飲みに行った。
加藤に連れて行かれた店で飲んだ後、二件目に向かって歩いていると…
佐藤君が、女の子と歩いているのを見た。
なぜか二人の距離が近い…
そして…女の方が佐藤君の腕を取った。
それを見た途端、何とも言えないモヤモヤとしたものが溢れてきた。
クソ…なんだあれ…
声をかけるか悩んでいたら、加藤が佐藤君に気付いて声をかけた。
しかも飲みに誘っている。
おおかた、佐藤君と一緒のこの女が気に入ったのだろう。
…余計な事を。
佐藤君のこんな場面、見たくないのに。
二人はどういう関係なのだろう?
佐藤君は「後輩」と言ったけれど、女の方からはそれ以上の熱を感じた。
それになぜか、俺に敵意を感じる…
もしかして、二人は良い仲なのだろうか?
もし、佐藤君に好きな人が出来て、その相手が女なら…俺はすんなり身を引こうと思っていた。
だって、女と付き合った方が、将来的にも世間的にも良いはずだから。
でもまさか、こんなに早くその時が訪れるとは…
途中で、その女が俺に言った。
「小栗さんって、モテて大変そうですね。大切な人がいるなら、ちゃんと気持ち伝えて捕まえとかなきゃ、小栗さんの意思とは関係なく泣かせちゃいますよ〜」
こんな若い子に…しかもおそらく俺のライバルからアドバイスをもらうなんて…
でも、彼女の言葉は俺の胸をチクリとさせた。
確かに過去にたくさん女を泣かせた気がする…
佐藤君も泣く事があるのだろうか…泣かせたくないな…
そんなふうに考える自分がおかしくて、フッと笑いが溢れた。
ただ俺はこの言葉の意味をキチンと理解すべきだった。
「ちゃんと気持ちを伝えて捕まえる」という基本的な事が、俺は出来ていなかったのだから。
佐藤君と秋吉さんを、複雑な気持ちで見送る際、秋吉さんから驚く事を耳打ちされた。
「好きならちゃんと行動しないと。実るもんも実らなくなりますよ」
この子は、俺の気持ちに気付いたのか?
肯定も否定も出来ず、ただ彼女の顔を見た。
なんで敵に塩を送るような事を?
行動…したら、君から佐藤君を奪えるという事か?
このメッセージのおかげで、その日俺は素直に行動を起こせて、佐藤君を得る事が出来た。
佐藤君は、彼女じゃなくて俺を選んでくれた。
女じゃなくて、男の俺を。
その事がすごく嬉しかった。
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