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週末ドライブ …5
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駐車場に戻ると、雅治さんが「あれ?」と小さく声を出した。
目線を追うと、雅治さんの隣の車が少し頭を出したりバックしたりを繰り返している。
どうやら、駐車スペースじゃないところに止めている車が邪魔で、車が出せないようだ。
上手くハンドルの切り替えが出来れば出れそうだけど、それが無理といった感じ。
初心者かな?
車のそばまで行くと、車内で若い女性2人が困った顔をしているのが見えた。
雅治さんがリモコンキーで車の解錠をピッとやると、それに気付いた助手席の女性が窓を開けて「ごめんなさい!うまく出れなくて…。先に出てください」と、言った。
雅治さんは、車に乗り込まずに立ち止まる。
「良かったら俺が代わりに車を動かしましょうか?」
そう言って、営業スマイルを出した。
おぉ!優しいなぁ。
女性が顔を見合わせて何かコソコソ話した後、運転席の女性が降りてきて「ごめんなさい。こういうの下手で…。お願いしても良いですか?」と言った。
「構いませんよ」
そう言って微笑んだ雅治さんに、女性は頬を染めた。
雅治さんが運転席に乗り込むと、今度は助手席の女性が頬を染める。
それを見て、ツキンと胸が痛んだ。
って…俺、心が狭いなぁ。
彼女が隣に座るのはこの一瞬だけなのに。
「ご迷惑をおかけしてすみません」
いつの間にか俺の隣に立っていた運転手の女性が、俺に謝ってきた。
俺と同い年くらいかな?
「いいえ。困った時はお互い様ですから。それに、悪いのは変なところに駐車してるあの車ですよ」
そう言って微笑むと、恥ずかしいのか、さらに頬を赤く染めた。
そんなやり取りをしているうちに、雅治さんは見事にハンドルを操作してあっさりと車を出した。
雅治さんが車から降りると、助手席の女性も降りてきて運転手の女性と二人で「ありがとうございました」と深々と頭を下げた。
「いや、これで俺たちの車も出しやすくなったから。気にしないで」
そう言って俺に目配せをして、二人で車に乗り込もうとすると…
「あのっ…もし良かったら、連絡先を教えてもらえませんか?今度、お礼をさせてください!」
助手席の女性がそう言った。
逆ナン…
さらにツキンツキンと胸に痛みが走る。
雅治さん、やっぱりモテるなぁ。
カッコ良い上に優しくされたら…そりゃ堪んないよね。
雅治さんは、俺を見てニヤリとした後、彼女たちの方を見た。
「ごめん。そんな事したら悲しむ彼女がいるから」
えっ?と思わず雅治さんを見た。
雅治さんは、ハリウッドオーラ全開の非の打ち所がない微笑みを彼女たちに振りまいてから「それじゃ」と言って自分の車に乗り込む。
俺も「じゃあ、気をつけて帰ってね」と言って、雅治さんの後に続いて助手席に乗り込んだ。
ドアをバタンと閉めた音で、彼女達はハッと我に返ったようになって、再びこちらに頭を下げてから車に乗り込み、駐車場から出て行った。
それを見ながら、雅治さんが「クックッ」と笑う。
「彼女って言っちゃったけど、彼氏の方が良かったかな?」
そう言って俺を見た。
う…『彼女』って俺の事だったんだ。
「彼女、で良いです。むしろ…彼女が良いです」
彼女がいるって、すごく嬉しい断り方をしてくれたのに、なぜか胸の痛みが取れなくて、下を向いてしまった。
「どうした?」
と、雅治さんが俺に少し近付いた。
「あの…いえ、何でもないです!ごめんなさい」
そう言って、笑って雅治さんを見たけど、なぜか雅治さんは微笑み返してくれなかった。
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