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誕生日会 …2
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とりあえず、雅治さんに、お茶でも出そうとした時…
「なんか良い匂いする…お腹すいた…」
と、雅治さんが俺を背中から抱きしめるようにして言った。
「もしかして、お昼食べてないんですか?」
「うん。時間なくて…」
そう言って、俺の耳にパクリと食いついた。
「ひゃ!…もう!やめてくださいっ」
嫌がってみせた…けど、本当は嬉しかった。
やっぱり家だと、その…イチャイチャできていいな…なんて。
「あの…実はデリバリーなんですけど、夕飯取り寄せたんです。良かったら…ちょっと早いけど夕飯にしますか?」
「へえ!いいね!ありがとう。んー…そうだな。ホント腹減って…。陸は?もう夕飯でもいい?」
「はい!僕も、お昼は簡単に済ませただけなので」
まだ16時を過ぎたばかり。
少し時間は早いけど…後でケーキもあるし、さっそく夕飯にする事にした。
某有名すき焼き店から取り寄せた、豪華お弁当(弁当って言うより、御膳?)をテーブルに広げると、雅治さんがびっくりしたようにそれを眺めた。
「どうしたの?こんな豪華な…」
「へへっ。22日、雅治さんの誕生日でしょ?それで、お祝いしたくて準備したんです。飲み物はどうしますか?このお肉に会うような赤ワインも買ってあるんです。あ、ビールもありますよ?」
そう言って、冷蔵庫を開けようと手を伸ばすと、その手を後ろからギュっと握られて「えっ?」と振り向いた俺の唇に、雅治さんがキスをした。
かと思うと今度はその腕に包まれて、苦しいくらいに抱きしめられた。
「自分の誕生日、忘れてた…スゲー嬉しい。ありがとう」
「いえ。たいしたおもてなしは出来ませんが…」
「何言ってんの?十分だよ」
とりあえずビールを出して、この日のために買ったグラスに注いで、乾杯する。
「誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。って、もう祝ってもらうような年齢じゃないんだけどね…でも、純粋に嬉しいよ」
カチンとグラスを合わせたところで、雅治さんのスマホが震えだした。
チラっと画面を見た雅治さんが、渋い顔をする。
電話?
雅治さんは、画面を見たまま出ない。
「出なくていいんですか?」
「いや……いいよ」
そう言ってる間に、スマホが静かになった。
と思ったら、すぐにまた震えだした。
雅治さんはグラスをコトリと置いて、盛大にため息を吐いた。
「ごめん。前に話した、俺が指導してる新人から。…ちょっと電話出るね」
「どうぞ」
俺もグラスを置いて、雅治さんの様子を伺った。
「はい。………え?それで?……フロアに電話した?まだ誰かいるだろ?……ハァ。とりあえず、俺、食事中だから……え?……分かったよ。はい。じゃあね」
通話しながら、雅治さんの表情はどんどん険しくなっていった。
通話を終えて、再び雅治さんが大きなため息を吐く。
「どうしました?」
「あー…。今日の午前中、この子も一緒に出社して仕事してたんだけどさ。なんか社員証を失くしたらしくて。…会社に戻って探すにも、社員証がないからセキュリティのゲート通れなくて、困って俺に電話したらしい。ハァ…俺じゃなくて、社内の誰かに頼めって…」
「…大変ですね。なんか」
「ごめん。…最悪、俺が行かなきゃならないかも。もし本当に紛失なら、セキュリティ上、色々処理がいるから」
「そう、ですか…」
「本当にごめん。とりあえず食おう?すげー美味そう」
「はい!」
二人でいただきますと手を合わせて、お弁当を食べる。
「ん。美味い」
「良かったです!」
お弁当はとても美味しい。
でもなんか、胸にモヤモヤしたものがあった。
雅治さんはビールに手をつけない。
…会社に戻る可能性が高いのかな?
3口くらい食べたところで、またスマホが震えだした。
「はい。…は?…分かった。けど俺、今飯食ってるから。え?……あー…分かった!分かったから。はい。それじゃ」
電話を切ってすぐに雅治さんが俺に頭を下げた。
「陸、ごめん。今から行かなきゃならなくなった…」
「えっ?
……分かりました。大事になったら大変ですもんね。俺に気にせず、行ってください」
寂しいけど、そう言うしかない…
「すぐに戻ってくるから。とりあえず、また連絡する。あ!帰ってから続き食うから」
雅治さんは「ごめん」と言いながら、俺にキスをして、慌ただしく出て行った。
なんだよ…これ…
俺は、見たこともない雅治さんの後輩にモヤモヤの…怒りの矛先を向けて、ビールを煽った。
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