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結局、悩む …1
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12月に入って、S電機でのプログラム納品作業が始まった。
作業期間は一週間。
最終期日は厳守と言われているので、佐々木さんもヘルプで来てくれている。
相変わらず、松井さんは雅治さんに近い…
モヤモヤするけど、雅治さんにその気がないのは分かってるから、気にしないようにした。
そして、意外って言うか…まあ当然と言えば当然なのかもしれないけど、松井さんは仕事が出来た。
質問が多いけど、一度言われたことはちゃんと理解して、同じ事は質問しない。
雅治さんの課長さんに「松井の事、よろしくお願いします」と頭を下げられてしまったので、たまに松井さんからの質問に俺が応えたりもしている。
きっと、課長さんに気に入られてるんだな。
そして、松井さんは…俺にも心なしか近かった。
そういう距離感の子なのかな?
でも、課長さんや佐々木さんにはここまで近寄らない気がするし…
謎な子だ。
作業2日目まで、順調に進んでいたけど、3日目でどうしても上手くいかないテストが出て来た。
佐々木さんもプログラムを見直してくれてるけど、解決しない。
半日悩んだけど答えが出ずに、雅治さんに相談する事にした。
こういう時は、客先に相談して、テストの方法を変えてプログラムを書き換えたりする。
すぐに、雅治さんと松井さんがテストルームに来てくれた。
雅治さんがテスト結果を見ている隣で、松井さんが俺のパソコンを覗いて、プログラムを見始めた。
「…あれ?ここって…奇数のテストは最初のラインからスタートするんですけど、偶数のテストは最後のラインからスタートするんじゃないですか?…ここ、ほら」
松井さんに指差されたところを見る。
「…えっと…」
見たけど…よく分からなかった。
もらった仕様書通りに作ったハズだ。
「あ…確かに。このテストは前後逆になるところですね」
そう、佐々木さんが答える。
「えっ?そうなんですか?でも、仕様書はこうなってたはずですけど…」
松井さんが、小さくため息を吐いた。
「佐藤さん、ここ、打ち合わせの時に伝えましたよ?それに、この種類のテストが、こう…前後入れ替えになるのは基本じゃないですか?」
松井さんに、ビシッと言われて…固まった。
打ち合わせの時に…言われた??
「申し訳ありませんっ」
どうしよう。
確かにあの時、松井さんの事が気になって、気がそぞろになってたタイミングがある。
あの時、聞き逃したんだろうか…
「あぁ、そこは確かに、口頭で伝えたね。でも、口頭だけで仕様書の訂正を忘れていたこちらも悪い。
あと、松井さん。佐藤君はここの社員じゃないんだから、テストの基本が分からないのは仕方ないよ。そういう言い方をしないように」
「…はい」
松井さんが、シュンとした。
「申し訳ありません。すぐに直します!」
「申し訳ありません」
佐々木さんと二人で頭を下げて、プログラムの修正を始めた。
雅治さんと松井さんは、すぐに事務所に戻っていった。
「口頭で言われただけなら、仕方ないと言えば仕方ないけど…今度から気をつけろよ?」
「はい、すみませんでした」
なんか、ちょっと泣きたくなった。
松井さんに気を取られて、仕事もちゃんと出来ないなんて。
かっこ悪すぎる…
雅治さんは庇うようなこと言ってくれたけど、佐々木さんはちゃんとテストの基本とやらを理解してるようだ。
つまり、俺も知っておくべき事だったのに、知らなかった。
…やっていることを理解してなかったんだ。
もう1年以上もS電機のプログラムを見てるのに。
松井さんより、長いのに。
情けない。
それからは特に大きな問題もなく、作業は順調に進んでいった。
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