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結局、悩む …2
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納品作業、最終日の金曜日。
昼食後、タバコを吸いに行った佐々木さんと別れて、一人でテストルームの横の休憩室に行った時のこと。
コーヒー片手に椅子に腰掛けたところで、松井さんがやって来た。
「お疲れ様でーす。あれ?佐藤さん、お一人ですかっ?」
そう言って、俺の隣に腰掛ける。
「お疲れ様です。佐々木さんはタバコを吸いに行ってますよ」
「へぇー。…あ、プログラム、無事にOK出ましたよ!聞きました?」
へぇーって…今すごい興味なさそうに言ったよね?
…ま、いいけど。
て言うか、何しに来たんだろ?
「あ、はい。無事に完了しました。色々とありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ…私、質問ばかりで迷惑かけましたよね?すみません。気になることは、確認しないと気が済まなくて…。一つ一つ確認しないと、分からない事が増えていって…嫌なんです」
「あー。最初はそうですよねー。どこが分からないか分からない感じ?ありますよねー」
俺のその答えに、松井さんは曖昧に頷いた。
…どうせ俺は、どこが分からないか分からない。それ以前に、分かってないことが分からない新人時代を過ごしましたよ。
頭の良さそうな松井さんには無縁なのかもしれないけどさ。
「あのー…」
突然松井さんが、モジモジしながら話し出した。
「あの、佐藤さんは、小栗さんと仲良かったりしますか?」
「え?」
「あ、いえ。…あの、小栗さんって、すごくクールじゃないですか?プライベートの事がよく分からなくてぇ」
プライベートを知りたいってこと?
それは…どういう意味だろう。
単なる興味?それとも…
と言うか、こういう話をするために、ここに来たの?
「さぁ?プライベートを知るような仲ではないですので…」
「そうなんですかー。なんか小栗さんって不思議な人なんですよねぇ。ずーーっと一緒にいるのに、全然掴めないんですぅ。だから、何か気になっちゃって」
そう言って、口をタコみたいにして、足をプラプラさせた。
見た目だけじゃなくて、中身も子供みたいに見える。
…仕事中は別人だけど。
っていうか、最後の「気になる」って、どの程度?
それが、俺は気になりますが?
「はは…気になるって…松井さん、小栗さんの事が好き、とか?」
あー、俺、自然に笑えてる?
自然に質問できてる?
「えっ⁈そんなんじゃないですよぅ!私、ミーハーって言うか。小栗さんってカッコいいから気になっちゃって!…あ、佐藤さんの事も気になってますよ〜。佐藤さんもカッコイイですよね〜?」
「え?いや、そんな事ないですよ」
…なんか、はぐらかされた?
まあ、好きだったとしても、俺なんかには言わないよな…
「いえ!佐藤さん、すっごいモテるでしょ?私の同期の子が佐藤さんのこと見かけて、一目惚れしたとか言ってましたもん!」
「え?…あ。ははっ。光栄です。でも、そんなにモテませんよ?」
何?このヨイショ…
「えーと。佐藤さんは、彼女いますかっ?」
えっ⁈
突然そんなこと聞いちゃう?
「あー…そうですね…。付き合ってる人は、います」
「そうなんですかぁ。残念っ!もしフリーなら、合コンしたかったなぁ」
松井さんはそう言って、可愛らしい笑顔で首を傾げた。
…なんだこのノリ?
あぁ、そう言えば、雅治さんが「若い」って言ってたのってこういう事?
とりあえず、俺は笑ってごまかした。
「小栗さんも、彼女いるらしいんですよ〜。知ってますっ?」
「あぁ…そうなんですか?」
プライベートは知らないと言った手前、知らないフリをする。
「でも、女の人の影が見えないんですよね〜。不思議なんですぅ」
ギク…
というのは、こういう時に使うんだと思った。
女の影が見えない?
って、そりゃそうだ。
相手は…俺ですから。
これ以上、何か言われたらボロが出るかも、とヒヤヒヤしていたら、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って、会話はそこで終える事ができた。
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