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モヤモヤの原因 …4
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「松井がどうした?」
「あ…いや…あの…」
どうしよう。
少なからず雅治さんが、松井さんのことを大切な後輩だと思ってるなら、俺の告げ口は雅治さんにとって迷惑かも知れない。
だって、電話の盗み聞きだし…。
それで松井さんの文句みたいなこと言ったら、俺のことどう思うだろう?
「陸?…ちゃんと言って?何があった?ここまで来て、何もないとか嘘はなし。思ったことは言う。…約束だろ?」
雅治さんは、身体を離して、ベッドに腰掛けた。
「おいで」
そう言って、隣をポンポンと叩く。
うぅ…
そばに行きたい。
でも、そこに座ったら、ちゃんと喋らなければならない気がして動けない。
「りーく」
俺の名前を呼んだ雅治さんが、優しく微笑むもんだから、俺は引き寄せられるように足を動かして、雅治さんの隣に腰掛けた。
腰を抱くような感じで、雅治さんが手を回す。
雅治さんを見上げると、全て見透かされてるような気分になる。
「陸が言わないなら、俺が松井に聞こうか?」
「ええっ⁈…いえ!あの…別に、何かされたわけじゃ…てゆーか…あの…何てゆーか…」
「松井に直接聞かれるのが嫌なら…言って?」
雅治さんの真剣な目に、黙っていることが辛くなって…
俺は口を開くしかなかった。
「さっき…そこのコンビニの前で、松井さんが誰かと電話してたんです。それを、たまたま聞いちゃって…」
「うん。…それで?」
「それで、その内容が…
雅治さんと彼女を別れさせる…みたいな話で…」
「…は?」
雅治さんは、苛立ちを露わにした顔をした。
何かを考える素振りをしながら、俺の背中をさする。
「…なんか、雅治さんと彼女と会わせないようにしてるとか…ぬいぐるみをわざと置いたとか…そういう事を話してたんです。
僕、雅治さんになかなか会えないから、松井さんにヤキモチ妬いて、雅治さんに対してもモヤモヤぶつけて…、その上、仕事もうまくいかないし……
あぁ、ごめんなさい。うまく説明できないけど…松井さんにまんまと悩まされてた自分が馬鹿らしくて…」
「まさか…松井がそんな…」
雅治さんが大きくため息を吐いて、手を額に当てた。
…やっぱり、言わなきゃ良かったかな。
雅治さん、これ聞いて何を思ってる?
少しの沈黙の後、雅治さんが口をひらいた。
「まさか、松井がそんな事してるとは気付かずに…ごめん。
実は…松井が俺のこと特別な目で見てるような気はしてた。…けど、確証はないし、それを陸に言って更にヤキモチ妬かせるのもどうかと思って黙ってた」
確かに、雅治さんからそんなこと聞かされたら、もっとヤキモチ妬いてたかも。
でも、でも…
気付いてたの?
松井さんの気持ちに?
なのに…なんで…
「松井さんの気持ち…気付いてて、家に上げたりしたんですか?」
「え?…あぁ。あれは、あいつらがしつこくて。それに、松井以外にも数人、男もいたし…。すぐ帰るって約束で上げたのに、あいつらが勝手に…」
「クマのぬいぐるみだって、どうして車に放っておいたんですか?」
「あれは、単純に面倒臭くて…」
雅治さんが俺に触れていた手を外した。
そこから身体が冷えていく感覚がする。
「誕生日の時だって!」
「あれは!
……いや、ごめん。色々、悩ませてて…ごめん」
雅治さんが俯いて唇をぎゅっと結んだ。
あぁ、違う。
俺は何がしたいんだ。
雅治さんにそんな顔させたいんじゃない。
でも、溢れるのを止められなくなった。
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