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観戦 …2
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大きなため息を吐いた河野さんが、少しの間の後、ゆっくりと口を開く。
「ふっ…そうね。…でも、分かるのよ。特別な目で、彼のことを10年も観察してたんですから」
「……」
河野さん…
「彼が好きなタイプも、そういう相手に対する行動や表情も…たくさん見てきた」
松井さんの表情は、ここからは見えないけれど、河野さんの言葉を真面目に受け取ってくれていることを祈った。
「だから、言える。彼はあなたの事は、これっぽっちもそんな目で見てないわ。もし彼女と別れたとしても、それは変わることはないわ」
「…っ!そんなの、分からないじゃないですか」
松井さんの、必死な声。
「…そう?…残念ね。諦めないと、可哀想なのはあなたなのよ?」
「…バカにしてるんですか?」
河野さんがまたため息を吐く。
「そうじゃないわ。小栗くんがあなたのこと、恋愛対象として見てないことが、私には分かるのよ。……だって、あなたを見る目が、私に対するものと同じだから。…女として、見られていないから」
河野さんが、しっかりと、その言葉を伝えた。
なぜか、その言葉を聞いて…
泣きたくなった。
河野さんは、どれだけ辛い思いをして、今に至るんだろう。
「早いとこ諦めないと、報われない無駄な時間が、どんどん増えていくだけよ?何より、今のあなたの行動は、彼を含め、周りに敵を作ってる。…長引かせるだけ、あなた自身が辛くなるのよ」
「……」
「あぁ。ついでに。私さっき『別れたら』なんて言ったけど…小栗くんは、何があっても今の彼女と別れたりはしないと思うな」
それを聞いた松井さんの歩調が、ちょっとゆっくりになった。
「…なんで…ですか?」
「か、のじょに対する、小栗くんの態度が、今までの彼女達と全く違うからよ。…あんなに幸せそうな小栗くん、私、初めて見たわ」
そう、なんだ…
「今後、別の相手が現れないとは限らないじゃないですか」
「まぁ…そこは否定できないわね。でも、今出会ってる女の中に、そういう相手がいないのは確かよ。…だって小栗くんが最初からあんなに積極的なの、初めて見たのよ。…そんな子、私は他に知らないわ」
「……」
なにこれ。
なにこのやりとり。
俺、当事者なのに、何も出来ない。
河野さんが攻められて…
守られてるのは、俺。
「河野さん!」
たまらなくなって、声をかけた。
前の二人が、振り向く。
「あの、…えっと…今回のプログラムで勉強したいことがあって…駅ビルの本屋にちょっと付き合ってもらいたいんですけど…」
河野さんが、少しの間考えて、ニコッと微笑んだ。
「えぇ。もちろんいいわよ?」
河野さんが松井さんを見る。
「そういう訳で、この話は終わり。
…あなたは理解力のある子だと思ってるから」
松井さんが、河野さんから目を逸らした。
「それじゃあね。…黒木くんも、お疲れ様!松井さんを宜しくね」
「あっ、はい!お疲れ様でした!」
営業くんが、ビシッと背筋を伸ばして挨拶した。
「じゃ、行きましょう?早くしないと、閉まっちゃうわ」
「はい!…あ、じゃあ、お疲れ様でした!」
松井さんと営業くんに挨拶して、河野さんを追いかけて隣に並んだ。
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