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予期せぬ来客
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雅治さんから、駅に着いたと連絡をもらってから、コンビニに向かうために部屋を出た。
エレベーターを降りて、エントランスへの自動ドアに近寄ろうとしたところで、見覚えのある後ろ姿が見えて、慌ててエレベーターホールに引き返した。
え?
今の…まさか…
そおっと顔を覗かせて、エントランスを確認する。
やっぱり、松井さんだ!
えっ?えっ?
何で?何しに来たの?
いや…雅治さんに会いに、だろうけど。
…けどっ、何でっ?
慌てて雅治さんにLINEを送る。
"松井さんが、マンションの下のエントランスにいます"
すぐに雅治さんから返事が来る。
"え?
分かった。陸は部屋に戻ってて"
そう言われたものの…やっぱり気になる。
松井さん、何をしに来たんだろう?
身を潜めて、駐車場側の出口からマンションの外へ出て入り口の方に回った。
物陰に隠れて様子を伺っていると、しばらくして雅治さんが来た。
雅治さんが、マンションに入らずに立ち止まる。
多分、松井さんを見て…足を止めたんだろう。
すぐに、松井さんが出てきた。
「っ⁈」
出てきた勢いそのまま、松井さんが雅治さんに…抱きついた。
松井…さん?
薄暗くて、表情までは分からないけど、雅治さんは微動だにせず、落ち着いた声で「どうした?」と聞いた。
「……」
「とりあえず、ここでこんなことされたら困るから、離れて?」
雅治さんが、松井さんの肩を押すのが見えた。
松井さんは少し離れたものの、雅治さんのコートを握ってイヤイヤと言うように首を振った。
「どうした?何か言ってくれないと…困るんだけど?」
雅治さんが、抑揚のない声でそう言った。
「…さっき…帰り道に、河野さんに…酷いこと言われたんです…」
…はぁ?
ちょっと!何⁈
どういうこと?
酷いこと言ったの、そっちじゃん!!
出て行って文句を言いたい衝動をグッと堪えた。
「河野が?…何て?」
雅治さんが、少し反応を示した。
「話すと長くなるし…ここじゃ話しづらいです…。お部屋にお邪魔したらダメですか?」
あぁ…
頭に血が上って、眩暈がしそう。
雅治さん!
河野さんは何も酷いことしてないからね!
テレパシーなんて通じるわけないけど、雅治さんに届くように、必死でそれを念じた。
「悪いけど…うちには上げられないよ。話なら、どこか別のところに移動しよう。…とりあえず、離して」
雅治さんが、腕を掴んで松井さんの手を退けた。
「どうしても、ダメですか?…人のいるところじゃちょっと…」
「…悪いけど、そう言う特別扱いは出来ないよ」
ため息を一つ吐いて雅治さんが淡々と答える。
「ど…どうしてですか?私がこんな悩みを話せるのは小栗さんだけなんです!…私は、小栗さんにとってはどうでもいい人間ですか?」
松井さんのその問いから少しの間をおいて、大きなため息を吐いた雅治さん。
「松井さんは、必要な人間だよ?」
「ほ、本当ですか?」
「あぁ…」
雅治さん…
「なら…「でもそれは、会社にとって、だよ。後輩を大事にするのが、先輩として、トレーナーとして、俺が君に出来ることだから。ただ俺は、プライベートまで会社に捧げる気はないよ?」
雅治さんのその言葉で松井さんが言葉を詰まらせたのが、雰囲気で分かった。
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