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【VD番外編】小栗雅治の苦悩 the final
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次の、月曜日の夜。
「雅くーん、お疲れ〜!」
約束通り、姉貴がチョコを取りにやって来た。
玄関先でチョコの入った紙袋を「ん」と差し出す。
「わあ!今年は多いわねぇ〜。きゃー!すごい豪華なチョコがある!今年はブランド物が多いね…うふふ…ありがとー!」
姉貴は袋を覗き込んでニコニコした。
「あの…さ」
「んー?」
「お返し…もう準備しなくていいから」
「えっ?なんでっ?」
姉貴がイラッとした感じになった。
「いや……ホワイトデーにお返しすんの、やめようかと思って」
「…どういう風の吹き回し?」
あぁ、予想通り、怒ってらっしゃる。
そりゃ「女の子には優しく」と口煩い姉貴なら当然の反応だ。
「とにかく…もう、無駄に愛想振りまいて期待させるようなのは嫌なんだ」
「…ほー…」
俺の言葉に、姉貴が眉を上げた。
「つまり、誰彼構わず愛想を振りまくことはしたくない事情があると?」
「……まぁ」
「ふーーん。なるほどねぇ」
姉貴が何かを考えるように腕を組んだ。
「分かった。じゃあ、こうしましょう」
「え?」
姉貴の口から「分かった」なんて言葉が出たのが信じられずに、思わず聞き返してしまった。
「明らかに、義理とか、お世話になってる人の分にはいつも通り返す。でも…告白の類には返さない。…で、どうかしら?」
「えっ?…でも、いいのか?…その、女には優しくってあれほど…」
「いいのか?って、雅くんがそうしたいって言ったんじゃない?…まぁ、私としては納得し難いけど。でも、愛想を振りまきたくないって事は、誰か一人、特別にしたい子がいるって事なんでしょう?」
「う…」
「なら、そっち優先するのが当然じゃない?」
姉貴…
「女の子には誰にでも優しくしてほしいけど…それで大事な人を悲しませるのはダメでしょ?私もそんくらい分かってるわよ。…ってゆーか、何?『お返ししないで欲しい』とか言う彼女なの?」
姉貴が顔をしかめた。
「いや、あいつはちゃんと返せって言ってたよ。でも、俺が勝手にそうしようと思っただけだ」
「あらあら、まあまあ…」
おばちゃんかよ?と突っ込もうとして、姉貴が微妙なお年頃って事を思い出してやめた。
「分かったわ。うん。お返しの内容も、考えとく。じゃあ、お返しする人数教えて?…とりあえず今年までは私がやったげるから。…でも、どうやら私がお節介焼くのも、今年でお役御免ね!」
「え?」
お役御免?
「あ、いや、何でもなーい。さてと…じゃあ、お返しする数教えて?」
「…ん。…さんきゅ」
そうして…
帰り際のこと。
「いつか、雅くんの彼女に会わせてもらえるのかなー?」
なんて事を、姉貴から初めて言われた。
「いや…どうだろ」
「そっか。ま、何にしろ、雅くんが幸せそうで、ねーちゃんは嬉しいわ!こんな穏やかな雅くん、初めて見たし!」
「は?…うるせー…」
「ふふ!その子、間違いなく良い子でしょ?逃がさないようにすんのよ〜?……じゃ、またね!」
と、言いたい事を言って去って行った。
逃がさないようにしたいのは、山々だよ…
だからこそ今年のホワイトデーは、陸にだけ気持ちを送りたい。
いや、今年だけじゃない。
これから先も。
誰か一人のために…
初めてそんな事を思ったバレンタインだった。
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