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松子、からの…
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河野さんが松井さんにヤキモチ妬いてるって?
どこでそう思うんだろう。
自意識過剰?
それとも…俺にそう思わせたい、とか?
「いや…そう、なんですかねぇ?…はは」
「私、いつも小栗さんと一緒じゃないですかぁ?だからライバルとして見られてるって思ってたんですけど…何か、ライバルとは違うみたいで…」
んん?
何が言いたいのか、よく分からない…
そんな俺の表情に気付いたのか、松井さんが慌ててちょこんと頭を下げた。
「あ、すみません、何言ってるか分かりませんよね?私も混乱しちゃってて…。つまり、河野さんにそういう風に見られてると思ったから、対向してあんな態度取っちゃったっていうか……その、すみませんでしたっ。あの時のことは、忘れてください!」
松井さんが今度は深々と頭を下げた。
ううーん。
やっぱり、何が言いたいのかよく分からない。
何か上手いこと言いくるめられようとしてる気がする。
だけど、頭を下げて謝られてるので、俺はこう言うしかない…
「分かり、ました。あの時のことは、忘れます」
「わぁ!ありがとうございます!本当、あの時の私、お酒が入ってどうかしてたんですぅ〜。ごめんなさい」
少し目を潤ませたその顔は…彼女が裏でやってた事を知らなかったら騙されるような可愛いさがあった。
女って…怖い。
そんな事をぼんやりと思った。
「二宮さんにも言われてましたけど…女の子なんだから、お酒が苦手なら外で飲むのは控えた方がいいかもしれませんね?」
と、嫌味っぽくならないように、笑顔で(でも本心は嫌味で)伝えると、松井さんは「うふふ」と笑った。
「そうなんです…。反省です。まだお酒に慣れてなくて…。てゆーか、佐藤さんって本当に優しいですね!すごく話しやすいし、それにカッコいいし…もし彼女がいなかったら、私、彼女に立候補したかったですぅ♪」
「え?…あはは…」
いや、勘弁!
それだけは勘弁!
「…あ!もうこんな時間!…私、歯磨きに行かなきゃ!すみません、お先に失礼させていただきます。午後からもよろしくお願いしますねっ♪」
ニッコリと可愛らしい笑顔を残して、松井さんは去って行った。
「はぁーー…」
疲れた。
何だったんだ?今の…
とりあえず、松井さんは口が上手いと言うか、小悪魔と言うか…自分が可愛い事を利用して、立ち回ってるんだと、改めて思った。
いちいち真面目に反応して対応してたら、身が持ちそうにない。
そんな事をぼんやりと考えていたら「お疲れ様」と、上から声が降ってきた。
見上げると…
「あ、二宮さん!」
爽やかスマイルの二宮課長さんが、いつの間にか俺のそばに来ていた。
「隣、いい?」
「あ、どうぞっ!」
二宮課長さんが、さっきまで松井さんが座っていたところに座る。
「今から休憩ですか?」
「いや…さっきからいたよ?」
「えっ?」
「あっちのテレビの方に。…で、二人の話し声が聞こえて。…ごめん、話聞いちゃった」
二宮課長さんは、テヘッと言った感じに肩をすくめた。
「ちょっと気になったんだけど…さっきの…松井の謝ってた『あの時』って?」
えっ?最初から聞いてたの?
てゆーか…地獄耳?
「いや、その…」
さっき『忘れる』と言った手前、告げ口みたいな事をする気には、なれなかった。
「ま、いいや。あの子、ちょっと癖があるみたいだね。何か、迷惑かけてる…よね?申し訳ない」
「あ、いえ」
「もし、何か困ったことがあれば、何でも俺に言ってね?問題を消すのが俺の仕事だから、遠慮なくどうぞ?…と言うか、それ以前に、ちゃんと教育しとかなきゃだよね?本当にごめんね?」
「いえ。その…大丈夫です。すみません。ありがとうございます」
二宮課長さんって、本当に不思議な人。
つい、何でも話したくなる雰囲気の持ち主。
思わず、松井さんの愚痴を言いたくなった。
……言えないけど。
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