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二宮課長さん …5
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「どう?今のジョブ。難しい?」
二宮課長さんが、空いたグラスにビールを注ぎながら言った。
「んー。そうですね。初めてのことなので、はっきり言って難しいです。…って、すみません。僕がこんなこと言っちゃいけないんですけど…」
「はは!いーよ。仕方ない。そうして成長していくんだし、そう言ってもらえた方が、自信満々でミスされるよりもよっぽどいいよ」
「は…すみません」
二宮課長さんは、楽しそうにビールを飲んだ。
「ウチも、難しいこと頼んでるの承知だから。何かあればすぐに言ってもらいたいし。…佐藤くんって、一人で頑張っちゃうタイプでしょ?」
「えっ?いや…」
うちの上司にも同じ様なことを言われたことがあるから、ドキッとした。
会って数日の二宮課長さんに言われるとは…
「無理しないでね?一緒に頑張りましょう」
そう言って、グラスを持ち上げた。
俺も慌ててグラスを持ち上げる。
「ありがとうございます!宜しくお願いします」
カチンと、グラスを合わせて、グラスのビールを飲み干した。
もしかして、こんなこと言うために、誘ってくれたのかな?って思った。
単に、俺が頼りなさ過ぎて、気合い入れるためなのかもしれないけど。
でも、会社を通してじゃない個人の俺を見てもらえてるっていう感じは、何だかすごく嬉しかった。
頑張ったら、ちゃんと評価してくれそうな…
って思ってる時点で、二宮課長さんに乗せられちゃってる気もするけど。
はは。
ま、何でもいいや。
こうやって見て(監視して)くれてる人がいると、多少なりとも気合いが入る。
その後すぐにラーメンと餃子が来て、仕事の話をチラホラしながら、楽しく食事した。
オススメってだけあって、餃子はとても美味しかった。
会計は二宮課長さんがサッと一緒に払ってしまってちょっと揉めたけど「じゃあ、次回お願いね!」と言われて、俺は財布を引っ込めるしかなかった。
…っていうか、何気に次のお誘い?
いやいや、奢った時の常套句だよね?
二宮課長さんのこと、馴れ馴れしいからってちょっと悪く見過ぎかな?
はは…
そんなこんなで店を出て駅に向かう途中のこと…
「佐藤君って、彼女と付き合ってどれくらい?」
「えっ?あ…えっと、まだ1年経ってないです」
突然、プライベートの話題になったからびっくりした。
しかも、彼女って…
ある意味タブーの質問に、仕事の時並みに神経を使う。
「へえー…そうなんだ?その人とはどこで知り合ったの?」
「えっ?」
「いや、俺も出会いが欲しくてさー。ちょっと参考に、と思って。…社会人になったら、急にそういった出会いが減るだろ?」
なるほどー、という顔をしながら、本当のことを言うか考えた。
…まぁ、これくらいなら言ってもいいか。
「そうですね。仕事つながりです」
「へぇ!そうなんだ!…社内?…とか聞くのは野暮かな?はは」
「ははは…」
うん。
これくらいなら怪しいことはないよね?
「でも、二宮さんモテそうだから、すぐに良い出会いがありそうですけどねぇ」
よし、うまく矛先を変えた。
「そうかなぁ?だと良いんだけど…なんか、うまくいかなくてね…」
二宮課長さんは少ししょんぼりした顔をした。
…片思いでもしてるのかな?
昨日の昼間の、なおちんって人…ではないな。
ふと、この前の違和感を思い出す。
…まさか、河野さん?
「じゃ、佐藤くんはあっちだったよね?今日はお疲れ様!また来週宜しくね」
「あっ、はい!ご馳走さまでした!」
改札を抜けてすぐに、二宮課長さんと別れた。
仲良くなったかと思えば、どこかで一線を引かれる感じがする。
つかみ所のない、不思議な人…
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