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珍しいこと …2
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俺たちが取った座席は、中央の後ろから2番目の席だった。
開始時間が遅いせいなのか、座席は半分くらいしか埋まってなくて、俺たちの両隣は2、3席ずつ席が空いていた。
若干ホロ酔い気味の俺は買って来たウーロン茶を右側に置いて、ストローを弄りながら、怪しまれない程度に場内や入ってくる人をチェック。
…よし。
多分、知り合いはいない。
なんて目をキョロキョロさせてると…
「俺にもウーロン茶ちょうだい」
と、俺の左隣に座った雅治さんが手を出した。
「どーぞ」
ヒョイとウーロン茶を手渡すと「ありがと」って言いながらストローを口にした。
あ…
間接キス…
いやいやいや…
今更こんな事でドキドキする関係じゃないのに。
でも心臓が脈打ったのはここが人の目があるところだからかもしれない。
それに…
雅治さんがストローくわえる姿なんて、なかなか見ないし。
…ストローくわえてる唇って、ちょっとヤラシイよね。
……。
だーー!!
俺、何考えてんのっ?
酔ってんのか⁈
うん!酔ってんのかも‼︎
「ん。ありがと」
飲み終わった雅治さんからカップを受け取る。
「真ん中置いとくから、いつでも飲んでいいよ」
二人の間のホルダーにカップを置こうとすると
「いや、もういらないから…向こう置いといて」
「え?…うん」
肘掛使うのに邪魔だからかな?
とりあえず、元の右側のホルダーに置いた。
すぐに照明が少し落ちて、映画の予告が始まる。
(二人で映画、初めてだな)
雅治さんが俺の方に身体を傾けて、小声でそう言った。
(うん)
言われてみれば…
映画デートは初めてだなって思うと、なんか嬉しくなった。
途中、すごく面白そうな予告があったので
(これ、見たい)
と呟くと、雅治さんが再び顔を寄せて
(じゃ次の映画デートはこれで)
って言った。
ふふっ。
ささやき声が、耳にくすぐったい。
今日はなんか、ドキドキすることばかりだなぁ。
何本かの予告が終わると、場内の照明は完全に落とされて…
映画が始まった。
うわー!!
今までテレビでしか見たことない映像が!
こんなスクリーンで!
興奮する!!
…と、握りこぶしを作ったら…
その上に、雅治さんの手が乗って来た。
えっ?
雅治さんをチラっと見ると、口端を少し上げるのが見えた。
俺の左手が、雅治さんの右手に包まれる。
握りこぶしを緩めると、隙間にねじ込む様に指を這わされて…
恋人つなぎをされた。
ま、雅治さん⁈
こんなっ、公衆の面前でっ⁈
いや、分かってる。
今の状況で、これを誰かに見られるとしたら…
前の人がトイレで席を立った時くらいじゃないだろうか?
それに映画は始まったばかりだし…
余所見する人なんてそうそういないだろう。
後ろの人は、俺たちの後頭部が見えてるくらいのはず。
それを分かって、こうして手をつないだんだ。
俺は隣に置いていたジャケットを膝にかけるようにして、つないだ手を念のため隠した。
それからキュッと手を握り返して、スクリーンに目を向けた。
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