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マズい …2
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俺の心臓はうるさいくらいに音を立てる。
ヤバい。
数時間前の俺を、盛大に恨む。
俺、どんな顔して雅治さんを見てた?
って言うか…雅治さんのこと好きな松井さんと同じ顔って言ったら…そう言う事でしょ?
「いや、えーと?…なんのことだか…」
とりあえず、とぼけるしかない!
「あっ、ごめんね?突然変なこと言って。俺、人の恋路を応援するのが好きって言うか…。よく恋愛相談も受けるし。…あ!大丈夫!俺、偏見ないからね?」
俺のトボケは通じなかったらしい。
「いや…あの…すみません…」
でも、ここで流されたらダメだ。
必死に、心当たりがない風の顔を作った。
「うん…確かに佐藤くん、年上の彼女がいるもんねぇ。戸惑うよねぇ。…俺なら、相談に乗ってあげられると思うんだけどな」
ど、どうしよう。
二宮課長さんの中では、完全に俺は雅治さんに気があるっていう事になってる。
「大丈夫。誰にも言わないから。…でもそーか。困難な恋って、認めにくいよね。あぁ、俺も似たような事あるから、親近感湧いちゃって」
困難な恋って…
あぁ、ヤバい。マズい。
どうしよう、どうしよう。
「あー、えっと、二宮さんは…困難な恋、してらっしゃるんですか?」
話題の方向を変えるしかない!
咄嗟にそう思って、今耳に聞いたことをそのまま返した。
口にしてから、なんて陳腐な質問なんだろうと思ったけど、そんなこと関係ない。
話題、変えなきゃ。
この人に追求されたら、俺、負ける気がする。
「うーん。そう、なのかな?はは。一度失敗してるくせに、懲りずにさぁ…馬鹿だよねぇ」
「いえ!良いじゃないですか!一度失敗してるからこそ、次、上手くいくんじゃないですか?…あっ、すみません!失敗とか…そのっ…」
話をすり替えるのに必死で、思わず言い過ぎた。
「あはは!いいよ。その通りだから。…でも、ありがと。佐藤くんって、優しいね。…ね?今度、その話聞いてくれる?」
「も…もちろん!」
「はは。ありがとう。…やっぱ、佐藤くんて、いいな」
「え?」
「あ、いやいや。…それじゃ、無理しないように、頑張ってね?」
「はい。ありがとうございます」
二宮課長さんは、ニコニコ笑いながら去って行った。
「……っ。はぁーーーー」
二宮課長さんが見えなくなってから、モニターに顔を向けて、盛大に息を吐く。
いつの間にか握りしめていた手は、汗で濡れていた。
マズい。
何?俺、そんなに分かりやすい?
二宮課長さんの言い方だと、俺の一方的な想いみたいな感じだったのが幸いだ。
間違っても、付き合ってるなんてバレる訳にはいかない。
とりあえず、今日はとぼけて過ごしたけど…
今後どうしよう。
どうしようって言っても、バレないようにとぼけるしかないけど。
心臓のドキドキが止まらずに、モニターに目だけを向けていたら…
「…と…う……佐藤?」
「…えっ?…あっ!佐々木さん!」
「どうした?ボーッとして。疲れたか?」
佐々木さんが怪訝な顔をして俺を見てた。
そりゃそうだ。
手も動かさずにボーッとしてたんだから。
「あ、いえ!ちょっと考え事を…すみません」
「どうだ?今日はまだかかるか?」
「データを取り終えて、まとめている途中です」
「そうか。俺はもう片付けたからタバコ吸ってくるな。…終わったら電話して?」
「分かりました」
佐々木さんを見送ってから、頬をバチンと叩いて、自分に気合を入れた。
こんな時こそ、仕事に集中しないとっ…
動揺なんてしちゃダメだ。
集中、集中…
と、自分を必死に仕事に向き合わせた。
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