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接近 …3
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二宮課長さんのその笑いが、どんな種類のものか俺には分からなかった。
おどけているようにも見えるし、本気で憎たらしいと思っているようにも見える。
…いや、もっと別の感情かもしれない。
二宮課長さんって、雅治さんに対して何か…あるのかな?
好きな子が、雅治さんの事を好き、とか?
そんな事を考えながらコーヒーを口にする二宮課長さんの横顔を見ていたら、缶から口を離した二宮課長さんが、照れたように笑った。
「なに?そんなに見られたら照れるんだけど?」
「あっ、ごめんなさい!」
「何か、気になることがある?」
「あ、いえ…」
覗き込むような目で見られて、ドキッとした。
二宮課長さんと話すたび、色々気になることは出てくる。
でも、どれも聞けることじゃない。
聞いていいか分からない。
返事に困ったところで、また後ろから声をかけられた。
「あ、二宮さん。こちらで休憩ですか?」
あぁ!佐々木さーん!
助かった…
「あぁ、お疲れ様です。俺、ここで昼のテレビ見るのが好きなんですよ。…おっと、あと5分で昼休み終わりか…。じゃ、佐藤くんありがとね。…ではまた」
二宮課長さんはいつもの優しい笑顔を浮かべながら、缶コーヒーを持ったまま去って行った。
「佐藤って、何か二宮さんと親しげだなー」
佐々木さんがポツリとそんな事を言った。
「えっ?そうですか?」
「何か、雰囲気が似てるからかな?一緒にいて違和感がない感じ」
「へ、へぇ…そうですかね?」
何か、ドキッとした。
佐々木さんから見たら、俺と二宮課長さんって親しげなんだ。
…じゃ、さっき来た雅治さんには、俺たちのことはどう見えたんだろう?
そう思うと、ドキドキが大きくなってきた。
さっき雅治さんから感じた、ピリッとしたものは…もしかして、ヤキモチ?
でも、俺たち男同士だし?
雅治さんは、俺が男好きじゃないのは知ってるから…
大丈夫…だと思いたい。
あぁー。
雅治さんに言い訳したい気もするけど…本人から何も言われてないのに、二宮課長さんの名前出すのはおかしいよね?
……うん。
俺は自分にそんな事を言い聞かせながら、午後の仕事に戻っていった。
その日の定時後。
河野さんが今日の作業の確認に来た。
色々報告をして、データを見てもらって…と一通り終わったところで河野さんがこんな事をつぶやいた。
「小栗くんがいなくて、寂しい?」
「えっ??」
ビックリして、河野さんの顔をマジマジと見てしまった。
「あ、ごめん。違うの。何ていうか…今日、出張に行く前の小栗くんの様子がちょっと気になったから、二人に何かあるのかな?って…」
「…え?」
雅治さんの様子?
「いや、僕たち、別にそんな…」
「そっか…」
河野さんが、何か考えるようにして口を結んだあと、内緒話をするかのように俺に少し近づいて、「あのね…」と囁いた。
その瞬間…
「お疲れさーん」
その声にビックリして振り向くと、二宮課長さんがいた。
「あっ、お疲れ様です」
声をかけられるまで気配を感じなかった。
この作業ルーム、心臓に悪い。
って言うか…今のはわざと気配を消して突然声をかけられたような…
そんな気がしなくもなかった。
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