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その結末 …2
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雅治さんに言い訳したい。
ちゃんと説明したい。
けど、この状況では、何も言えない。
押さえつけられていた肩をゆっくりとさすった二宮課長さんが、頭を深々と下げた。
「すまん…。小栗。お前たちのこと、知らなかった。知らずに佐藤くんを傷付けようとした。…頼む、俺のこと殴りたいなら遠慮なく殴ってくれないか?」
バレた!
ってゆーか、殴るっ⁈
「ちょ、ちょ、待ってください!僕、何もされてないですから!二宮さん、酔ってただけですよねっ?ねっ?小栗さんも、落ち着いてください!本当に、何もなかったですから!」
暴力はマズイと思って慌てて止めに入ったけど、俺の声に二人は反応しなかった。
二宮課長さんが、ゆっくりと頭を上げる。
「こんな馬鹿な俺は、殴られでもしないとダメなのかも知れない。…ヤケになって…佐藤くんの優しさを利用したんだ。あいつを諦められなくて…いや、いっその事諦めたくて、利用したんだ」
二宮課長さん?
雅治さんが、ギリと握りこぶしを作った。
「俺、サイテーなんだよ…」
二宮課長さんがこうべを垂れる。
「ダメです!暴力はダメです!利用って言っても、俺、実際何もされてないじゃないですか!」
二宮課長さんが、呆れたように俺を見た。
「ほんと、どこまでお人好しなの?……ほら、小栗。俺の決意がなくならないうちにやってくれないか?」
そう言って、雅治さんの前に、背筋を伸ばして立った。
「……」
雅治さんの腕が、ピクリと動く。
今にも手が出そうな雰囲気。
「お、小栗さんっ!」
慌ててその手を両手で掴む。
「ダメだよ!待って!」
ダメ、ダメ!
俺のために、上司に暴力振るうなんて!!
やがて、雅治さんが俺を見て、口を開いた。
「本当に…何もなかったのか?…だって、あの状況は…」
「何もないよっ?二宮課長さん、酔ってるだけだから!うまく説明出来ないけど、本当に、大丈夫だったから!」
「……」
雅治さんの握りこぶしが震えている。
怒りなのか、何なのか…
その震えに気付いた時、何でこうなる前に逃げ出さなかったのかと、何でちゃんと河野さんの忠告を聞いておかなかったのかと、自分が情けなくて仕方なくなった。
泣きたくなった。
目の前の雅治さんにしがみついて、泣きたくなった。
「俺が言うのも何だけど…俺が佐藤くんに無理矢理キスしようとしたんだ」
「にっ、二宮さん⁈」
雅治さんの腕に更に力がこもるのを感じた。
それを抑えるように、俺も手に力を入れる。
「だけど、未遂だよ?…お互い、キスしたい相手を、再確認したところだった。ちなみに、佐藤くんの相手は、小栗で間違いないみたいだね」
二宮課長さんが、雅治さんの手を握ってる俺の手を見た。
「あっ! いや…あの…」
しまった。
人前なのに、雅治さんの腕にすがりつくように手を握っていた。
慌てて手を離そうとしたら、その手を雅治さんに取られた。
手をつなぐ形で、ギュッと握られる。
「えっ⁈あ、あのっ!」
「いいから」
雅治さんが俺の顔をジッと見た後、目を閉じて大きく息を吐いた。
「…二宮課長。この場は佐藤くんに免じて、殴ることはしません。ただ…あくまで保留です。次に何かあったら…容赦しません」
「…でも!殴ってもらわないと、俺の気が済まないんだ!」
二宮課長さんが、雅治さんに食い入るようにそう言った時…
再び先ほどの路地から声がした。
「ここにいた!…って、何やってんの?…え?」
河野さんが、こちらに向かう足を止めて、俺たちを見ていた。
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