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その結末 …3
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「か、河野さん?どうしてここに…」
松井さんに続いて、河野さんが来るなんて。
どういうこと⁈
「二宮課長と佐藤くんがラーメン食べに行ったって聞いたら、突然、小栗くんが走り出すから。…色々、気になって…。…って言うか、途中で真っ赤な顔した松井さんに会ったけど。何?三角関係でも始めたわけ?」
河野さんが、俺たちをジトっと見ながらそう言い放った。
あぁ!また勘違いされた!
…いや、河野さんの場合、冗談だろうけど。
でも、俺の手を握る雅治さんと、その雅治さんに詰め寄る二宮課長さん。
変なとこ見られたのには、変わりない…
「河野…」
二宮課長さんが、河野さんを見て、すぐに目を逸らす。
「こんなところで何やってるんですか?渡辺課長が待ってますよ?」
河野さんが、俺たちの様子に気付いてるのかいないのか、この場の空気を変えるように、いつもの調子でそう言った。
「俺…」
「二宮さん!先に戻っててください!」
二宮課長さんが何かを言いかけたのを遮るように、俺は努めて明るく声をかけた。
「え?」
二宮課長さんがビックリしたように俺を見る。
「この事は、なかった事にしましょう。さっきの事…公にしたくありません。お願いします」
河野さんに聞こえないようにそう小声で伝えると、二宮課長さんの目が見開かれた。
「でも!」
「いいのか?」
雅治さんまでもが、俺を信じられないと言った目で見る。
「でもじゃないです。僕にもプライドがあります。男に力負けしたなんて、誰にも知られたくないんです。悪いと思ってるなら黙っててほしいんです」
俺がそう強く言うと、二宮課長さんがハッとしたかのような顔をして、唇をギュッと結んだ。
嘘じゃない。
別に、二宮課長さんを庇う訳でもない。
ただ、さっきの事は誰にも知られたくないんだ。
客先で男に襲われたとか…そういうのを騒ぎにしたら、きっとこの仕事を続けられなくなる。
周りからも、好奇の目で見られる。
咄嗟に、そんな考えが頭をよぎったから。
もちろん、河野さんからも、そんな目で見られるのは耐えられない。
「こんなとこで、なーにやってたんですか?…二宮課長?まさか、佐藤くんのこといじめてないですよね?」
河野さんが、こちらに近付いて来て言った。
どうしよう!
河野さんには、これ以上心配をかけたくないし、二宮課長さんとの仲を、俺のせいで悪くしたくない。
「二宮課長に、俺たちの事、話してたんだよ」
雅治さんが、サラリと口を挟んだ。
雅治さん?
「えっ?どういう事?」
河野さんが驚いた顔をする。
「とにかく河野、先に二宮課長連れて戻っててくれないか?俺、陸とちょっと話すことあるから」
「え?」
「いいから!」
「え、えぇ…。分かったわ」
雅治さんの有無を言わさない雰囲気に押されたかのように、河野さんがタジタジと答えた。
「…じゃ、二宮課長、行きましょう?…え?ちょっと、どうしたんですか?」
二宮課長さんの複雑そうな顔を見て、河野さんが眉を寄せる。
「あ、あぁ…いや。飲み過ぎたのと…二人のことにビックリしたのと…」
二宮課長さんが、笑顔を作った。
二宮課長さんが変なことを言わなかったことに、ひとまず安堵する。
二宮課長さん…ありがとう。
「じゃ、お邪魔虫は消えましょうか?」
河野さんはそう言って、二宮課長さんの背を押した。
「後で…説明しなさいよ?」
河野さんが振り向きながら(怖い顔で)俺たちにそう言って…去って行った。
路地に消える手前で、二宮課長さんがこちらに向かって、小さく頭を下げたのが見えた。
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