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路地の二人 …1
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二人が見えなくなったあと、雅治さんが大きくため息を吐いた。
「震えてる」
え?震えてる?
雅治さんが?
雅治さんが、繋いでいた俺の手を両手で包んだ。
「怖かったんだろ?今の陸を見る限り、俺はあいつを許せない。大人しく行かせて良かったのか?一体、何があった?」
雅治さんが苦しそうな顔をする。
あぁ…
あぁ…
震えてるのは…俺…
雅治さんの手の温かさを感じて、急に目の周りが熱くなった。
同時に雅治さんの顔が歪んで見えなくなる。
「っっ!」
一気に色んなものが押し寄せて来て…
雅治さんの身体に手を回して、ギュッと抱きついた。
「う、うっ…ご、ごめ…っ…うえっ」
ごめんなさいって言いたいのに、嗚咽が漏れて、上手くしゃべれない。
心配かけてごめんなさい。
迷惑かけてごめんなさい。
二宮課長さんを庇ってごめんなさい。
こんな俺で、ごめんなさい。
そんな俺の背中を、雅治さんは優しく優しくさすってくれる。
その手の温かさに、さらに涙が溢れた。
怖かった…
怖かったよう。
雅治さん、雅治さん、雅治さん…
がむしゃらに雅治さんにしがみ付く。
「陸が謝る必要は、どこにもないよ」
その声がとても優しくて、涙が止まらなくなる。
「うっ…お、おれ…っ、う、えっ」
ごめんなさい。
気を使わせて、ごめんなさい。
「ほら、無理に喋らなくていいから…」
そう言って、優しく俺を抱きしめてくれた。
あいつに握られた腕が痛い。
触られたところが気持ち悪い。
直前で止まってくれたけど…
キス…されるかと思った。
気持ち悪かった。
怖かった。
どアップの、あの顔を思い出して、プルプルと頭を振る。
雅治さんで、上書きしたい。
雅治さん…雅治さん…
雅治さんを求めて、顔を上げた。
俺の好きな人。
好きな温もり。
好きな香り。
好きな顔。
俺を見る優しい目…
そして…唇…
それを求めるように、少し顔を上げた時…
さっきの路地から、人の笑い声が聞こえた。
ビクッとして、雅治さんから慌てて身体を離す。
だんだんとその声が大きくなった。
どうやら、酔っ払いの集団らしい。
俺たちのいる小道の横をその集団が通り過ぎてから…ホッと息を吐いた。
マズイ。
ここは誰が通るか分からない外だった。
名残惜しさを感じながら、一歩離れて、雅治さんを見上げた。
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