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路地の二人 …2
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先ほどの集団にビックリしたせいで、涙はとりあえず引っ込んだ。
涙で顔がグチャグチャになっているのに気付いて、男のくせにこんな場所で嗚咽を漏らしながら泣いてしまった事が急に恥ずかしくなってしまった。
「グスッ…あ、あの、雅治さんは、どうしてここに?」
そんな顔を見られたくなくて、うつむいてハンカチで顔を拭いながらそう聞いた。
「んー。向こうでの仕事を必死で終わらせて…どうしても飲み会に参加したかったから慌ててその時入ってきた新幹線に飛び乗ったんだけど…」
そうなんだ。
忙しかったから連絡来なかったんだ。
それにしても、飲み会に参加したいなんて…雅治さんにしては珍しい。
それに、新幹線に飛び乗ったって…
雅治さんのイメージじゃない。
「新幹線に乗ってから、スマホの充電が切れていた事に気付いてね、誰にも連絡出来なかったんだ。すまない。とりあえず、聞いていた店の前に行ったら…運良く、河野と松井に会ったんだ」
「あ…」
二人が忘れ物を取りに戻った時に会ったんだ。
「うん。それで、二人と一緒に二次会のカラオケまで行ったんだけど、受付にいた佐々木さんから、二人がラーメン食いに行ったって聞いてさ……気付いたら飛び出してた。…飛び出した俺を河野が追いかけてきて、二宮課長が良く行くラーメン屋を聞いた」
なるほど、それで松井さんが雅治さんを追いかけて…
河野さんも俺を探してくれてたんだ。
「でも…そこに行ってみてもいなくて…」
そこまで喋って、雅治さんが言葉を詰まらせたように黙った。
それから、大きなため息を吐く。
「見つけられて、良かった」
雅治さん…
その雅治さんの様子を見て、俺がどれだけ心配をかけてしまったのか察した。
思わずまた泣きそうになって、グッと我慢する。
「でも、本当に何もなかったのか?」
「なかった。大丈夫だよ。…話すと長いから…ここじゃあれだし…後でちゃんと話すから」
泣きそうなのを誤魔化すように笑ってみたけど、雅治さんはそんな俺をすごく真剣に見つめてくる。
うっ…ヤバイ…
また涙が…
そう思った時、俺のスマホが震えだした。
今出たら、鼻声で…泣いてたことがバレるから、無視しようと決めたものの、なかなかスマホは鳴り止まない。
あれ?
留守電に切り替わらない?
あ…そうだ。
雅治さんから連絡あった時に気付けるように、留守電にしてなかったんだ。
しつこく震えるその画面を見たら、着信は河野さんからだった。
「あ…」
河野さん⁈
どうして?
もしかして、二宮課長さんが何か言った⁈
そんな思いが浮かんで、通話ボタンを押すのをためらう。
画面を見たまま動かない俺の様子を見て、雅治さんも画面を覗いた。
「河野……、貸して」
雅治さんが手を出すので、条件反射のようにスマホを手渡してしまった。
受け取った雅治さんが、スマホを耳に当てる。
「は…『ちょっと?二人でイチャイチャしてんじゃないでしょうね?』
雅治さんが応答する前に、河野さんが弾丸のようにまくし立てるのが漏れ聞こえた。
雅治さんが怪訝な顔をする。
河野さんの要件が気になって、耳を傾けると、雅治さんがスピーカー通話に切り替えてくれた。
「なに言ってんの?」
『…あ、れ?佐藤くんは?』
ドキリ…
「なに?俺じゃ不満?」
一瞬の沈黙の後、小さなため息が聞こえた。
『いや、いいわ。あのね、二宮課長が、あなたたちに気を使ったのか、佐藤くんはラーメン食べてる途中で気分悪くなったから帰らせました、って渡辺課長に言ってたわよ?だから、無理に戻って来なくてもいいって。…って事で、小栗くんは、帰るなら自分で言い訳してね?』
「あぁ、そう。分かった。…で?二宮課長は?」
『私に伝言を依頼した後、トイレ行っちゃったけど?まったく、人使いの荒い…』
河野さんがため息まじりにそう言った。
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