アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
帰ろう
-
『で?…何があったの?二宮課長と』
ギクリ、と音がするくらい、肩が跳ねた。
そんな俺を、雅治さんが横目で見る。
「いや?二人で仲良さそうにラーメン屋に向かってたのを見て…俺のモンだって思わず言っちゃった…って感じ?」
雅治さん?
『え?自分から二宮課長にケンカ売ったの?本当に?』
「まぁ、そんなところ」
えっ?ちょっ…雅治さん⁈
もしかして、俺のために嘘ついてくれてるの?
『はぁ。本気?…よくやるわねぇ。良かったの?バラして。…まぁ、二宮課長はそういうのを他人に話す人じゃないと思うけど…』
「あぁ、一応変なこと言わないか監視しといて」
『は?なんで私が…』
「とにかく切るぞ。これ以上…邪魔するなよ?」
雅治さんが、意地悪っぽく笑いながら言った。
『えっ⁈ちょっ…』
河野さんの言葉を遮るように、雅治さんが通話を終わらせた。
「これで、良かったか?」
雅治さんからスマホを受け取る。
「え?」
「河野に、さっきのあの状況、知られたくなかったんだろ?」
雅治さん…
やっぱり、俺のために…
「あの、ありがとう」
「ん。…でも、俺には秘密なしで頼む。…とりあえず帰ろう。続きは帰ってからだ」
「うん…」
それから、駅に向かって、駅のロッカーから雅治さんの荷物を取り出して…
タクシーで雅治さんの家に向かった。
タクシーに乗って行き先を告げてすぐ、雅治さんが、俺の手にそっと触れてきた。
ドキドキしながら手を開くと、雅治さんの指がゆっくりと俺の手の腹を這っていって、それから指を絡めた。
優しく、でもしっかりと、手を握られる。
ゾワリと快感が手から駆け巡った。
タクシーでの、恋人つなぎ。
そう言えば…雅治さんと出会ったばかりの頃、こんな事があったなと思い出す。
雅治さんの感覚に慣れたのか、あの時のように、握られただけであそこが反応することはなくなったけど…
ドキドキして、ホッとして…
こうして触れ合うと、とても幸せな気分になる。
俺が触れたいのは…触れられたいのは、雅治さんだけ。
改めてそう思った。
途中、渡辺課長に電話しなくていいの?と聞いたら「月曜日に謝るからいい」と言われた。
松井さんに変な勘違いされたみたいだけど、それはどうするの?って聞いたら「勘違いさせとけばいい」って。
なんか素っ気ない答えに、ちょっと寂しくなる。
「それより、一つだけ教えてくれないか」
雅治さんが、前を見たままポツリと言った。
「うん。なに?」
「あいつを…二宮課長をあっさり帰したのは、本当に自分のためだけか?」
え?
心なしか、握られた手に力が込められた。
「何か、他に庇いたい理由があるとか?」
雅治さんのその言葉にハッとした。
そうだ。
あんな場面見られたんだから、俺も疑われて当然だ。
のこのことあんな所までついて行った馬鹿なんだから…
こうやって手を握られているのは、心が離れないように、敢えて繋がれているような感じがしてきた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
425 / 559