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キス
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「ない、ないよ!二宮さんに特別な感情はないから!二宮さんを帰した時、本当に自分の事しか考えてなかったから。…だって…やっぱ嫌だもん。男に…キス、されそうになったとか、恥ずかしくて誰にも訴えられないし…。それに、何かされたわけじゃないのに、雅治さんが暴力ふるって、それが問題になるのも嫌だったし…。ほんと、ほんとだよ?」
俺がそう言うと、雅治さんは何か考える素振りを見せた後、ゆっくりと頷いた。
「ん。ごめん。疑ってた訳じゃないけど…やっぱり気になって…」
「俺が悪いんだもん…ごめんなさい」
「いや、俺が気にし過ぎてるだけだと思う…」
そう言って、雅治さんは黙ってしまった。
何にせよ、俺は雅治さんに嫌な思いをさせてしまったんだ。
今こうして手をつないでなかったら、寂しくて、辛くて、泣いてしまったかもしれない。
今の俺、涙腺緩み過ぎ…
いや、これを見越して、雅治さんは手をつないでくれたのかも。
それから、雅治さんちに着くまで俺たちは何も喋らなかった。
タクシーを降りてマンションに入る。
降りる前に離した手のひらが、寂しく感じた。
早く、二人になりたい。
無言のまま、エレベーターに乗り込む。
扉が閉まって、二人きりの空間になった途端に、雅治さんがピリリとしたオーラを消したのが分かった。
顔を見上げると、その目がまるで「おいで」と言っているかのように見えてしまって、俺は思わずその胸に飛び込んだ。
ふと、さっき、キスの上書きをし損ねたことを思い出す。
キス、したい。
見上げると、当然だけど俺の好きな顔がそこにあって…
踵を上げて、雅治さんの唇に近付いた。
それに応えるように、雅治さんが顔を近付けてくれる。
ふわりと唇が重なった。
雅治さんの、優しいキスに、心がキュンと温かくなる。
唇が離れて、伏せていた目を開けると、雅治さんと目が合った。
ほんの十数センチの距離で見つめ合う。
あぁ、俺の事をこんなに見つめてくれる人、この人の他にいるだろうか?
今日も、いっぱい俺の為に動いてくれた。
俺、このままこの人に全てを捧げたい。
なんて事を思った。
チン、とエレベーターが雅治さんの部屋の階に到着する。
再び無言のままエレベーターを降りて、部屋まで行った。
雅治さんの後に続いて、部屋の中に入る。
「バタン」と、後ろでドアの閉まる音が聞こえた時、俺の中の何かが弾けた気がした。
荷物を降ろした雅治さんの腕をグイッと引いて、俺の方を向かせる。
「ん?」
「雅治さん…。ね?キス、して?…初めての時みたいに、激しいやつ…」
タクシーの中で思い出したんだ。
いつかの、感情のままのキスを。
タクシーで手をつないで、エレベーターでキスされて、部屋に入ってからの…キスを。
あの時はまだ、好きなんて意識してなかったけど、でも、心のままに感じたキス。
あの熱さが欲しい。
何も考えられなくなってしまうくらいの、あのキスが欲しい。
「覚えてる?」
驚いた顔をした雅治さんは、一瞬目を細めた後…
「忘れるわけない」
そう言って、俺をドアに押し付けるようにして…キスをくれた。
何度も何度も角度を変えて、キスが降ってくる。
「んっ…」
熱い吐息が絡み合う。
雅治さん、雅治さん…
あの時のように、貪るようなキス。
でも、あの時と違うのは、俺たちの気持ちが繋がっていること。
あぁ、雅治さんが欲しい。
いくら激しくても、いくら欲望のままでも…雅治さんになら、何でもあげたい。
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