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決着? …3
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水曜日の定時後、二宮課長さんが指定したカフェに向かった。
会社帰りらしい人達で賑わってるそのカフェに雅治さんと一緒に入る。
ビジネス街なので、学生がワイワイ騒いでるみたいな感じはなかったけど、話し声でそこそこ賑わっていた。
二宮課長さんに言われた通りに、店員さんに名前を告げると、案内されたのは個室のような空間だった。
そこにはすでに二宮課長さんが座っていて、笑顔で片手を上げてくれたけど、心なしか緊張してるっぽい。
…ま、それは俺も同じか。
二宮課長さんの向かいに、雅治さんと並んで座った。
「わざわざ会社の外に呼び出して申し訳ない」
コーヒーを注文してすぐ、二宮課長さんが頭を下げる。
「いえ…」
「話はなんですか?」
二宮課長さんが頭を上げるや否や、雅治さんがそう聞いた。
ピリピリオーラ2倍で。
「うん。まずは…この間は本当に悪かった。俺、どうかしてた」
二宮課長さんが、再び頭を下げる。
「もういいです。…あれは、忘れる約束です」
あの時のことを思い出して、心臓がギュッと痛くなった。
ちゃんと喋れるか心配したけど、案外落ち着いて向かい合えているのは雅治さんのおかげかもしれない。
だって、雅治さんが、俺以上に怒ってるから。
逆に俺が冷静になれた。
「うん。すまない…。今日話したいことは、これからの俺のことなんだけど…」
これからの、二宮課長さんのこと?
「結論から言うと、会社を辞めようと思ってる」
え?…は?
辞める?
会社を辞める?
「なんでですか?それは…僕のせい、ですか?」
俺は、あの事をなかったことに…結果的には、彼を許したつもりだ。
怖い思いはさせられたけど…実際、何かされたわけじゃない。
なのに辞めるとか言われたら、逆に悪いことをしているような気分になるじゃないか。
「いや、俺自身の問題だよ。忘れると言っても、やっぱりギクシャクするし…それに…俺は自分が怖くなったんだ」
自分が、怖く?
二宮課長さんが、ため息を吐く。
「部外者の佐藤君にあんな風に気持ちをぶつけてしまうなんて…俺は自分が怖くなった。これ以上暴走しないようにするには、彼女から離れるのが一番だと…思ったんだ」
彼女から離れる?
なんにせよ、すごく後悔というか、反省というか…そういう気持ちはヒシヒシと目の前の彼から伝わってきた。
雅治さんは、さっきから微動だにしない。
何を考えてるか分からないけど…口を挟まないところを見ると、二宮課長さんの言葉を聞こうとしてくれてるのかもしれない。
ま、ここに着く前から、いつも以上に無口だったけど。
「俺が会社を去れば、佐藤君も居心地悪い思いをしなくて済むだろ?…それを伝えたくて、今日、会ってもらった」
しばらくの間、沈黙が流れた。
なんだよ…それ。
なんとも言えないモヤモヤが、じわりと湧き出てくる。
注文したコーヒーが届いてからやっと、空気が動き出した気がした。
最初に動いたのは雅治さんだった。
その場の空気を溶かすように、大きく息を吐く。
「で?…辞めるんですか?…佐藤君が逆に責任感じるような逃げ方で?」
「っ」
雅治さんのその言葉に、二宮課長さんが顔を上げた。
雅治さん…
「いや、そういうつもりじゃ…」
「いや、二宮課長なら…考えたら分かるでしょう?あなたが辞めれば、佐藤君が責任を感じて傷付くことくらい。…そういう人間だと知ってて。で、辞めるんですかね?」
雅治さんの言葉が、じわりと胸を熱くした。
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