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決着? …4
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「〜っ、っ」
何かを言いかけた二宮課長さんが、唇をギュッと結ぶ。
「俺は…どっちでもいいです。佐藤君をあんな風に扱った人が、目の前から消えてくれるなら、それはそれでスッキリします」
二宮課長さんが、また下を向いた。
ケンカ腰な雅治さんを見ながら、俺はどうすべきなんだろうと考えた。
俺のために怒ってくれている雅治さんの言葉も大事にしたい。
だけど…、だけど…
「でも…辞めずに、今まで通りでいる事を、佐藤君は望んでる…んじゃないか?」
雅治さんが俺を見た。
その言葉に、気付いたら頷いていた。
「なら、俺はそれでいいよ。…もう二度と佐藤君を傷付けないっていうのなら…それで…。佐藤君…君はあの問題をどう終息させたい?」
あぁ、雅治…さん…
あんなに、あんなに怒ってたのに。
なのに俺の気持ちを優先させて…自分の気持ちを抑えてくれるんだ。
雅治さんの胸に飛び込みたい気持ちをグッと抑えて、俺は二宮課長さんを見た。
俺の気持ちは、俺がちゃんと言わないと。
「辞める…なんて言わないでください。小栗さんの言う通り、責任感じます。そんなことされたら、逆に…居心地悪くなります。…できれば今まで通りにしてください」
二宮課長さんは、何かを考えるように、微動だにしない。
あぁ、この人は、俺が何を言っても辞める気なのかも…と思ったら、モヤモヤがどんどん大きくなってきた。
「会社辞めて…どうするんですか?…あの人のことは?諦めるんですか?」
ふと、浮かんだモヤモヤを口にする。
二宮課長さんが、ピクリと動いた。
「うん。彼女のことは…離れれば…そのうち忘れられる…と…思うから」
弱々しくそう言う二宮課長さんを見たら、モヤモヤがイライラに変わってきた。
忘れられる?
あんなにも強い想いを、俺にぶつけたのに?
「なんで…?なんで忘れるんですか?忘れられるんですか?」
「え?…いや、だって…」
歯切れの悪い二宮課長さんに、何かがプチンと切れた。
「た、しかに…あの時の二宮さんは…怖かったです。…でも、俺がした、あの思いは何だったんですか?…そんなに簡単に忘れるとか言えるのに、あ…あんな事したのなら、俺は……許せません」
ぶっちゃけ…
自分でも何言ってるかよく分からないけど、心に浮かんだことをどわーっと吐き出した。
黙ってはいられなかった。
口から吐き出さないと、何かが飽和して爆発しそうだったから。
「いや…その、そういう訳じゃ…」
二宮課長さんが慌てた。
「じゃ、どういう訳じゃですか?…そんなに簡単に諦められるなら、なんであんな事したんですか?…っ、サイテー…です。…ちょっとでも同情した俺が、バカみたいじゃないですか…」
そうだ。
河野さんが好きで堪らなくて、それが俺に溢れてしまったのだと思ったから…
仕方ない、と同情する部分もあったのだ。
だからなかったことにしようと。
許そうと思ったのだ。
なのに、簡単に諦められるようなこと言われたら…
しかも今、二宮課長さんがやろうとしてるのは、ただの逃げだ。
俺は襲われ損と言うか、本当に遊ばれただけみたいじゃないか。
恋愛相談も真面目に聞いてさ。
本当に、バカみたいだ。
「違う…違うよ。簡単になんて諦められない。俺は彼女のことを本当に大切に思っている。だから…だからこそ、離れるんだ」
二宮課長さんが、テーブルの上で手を組んで、ギュッと握った。
「今回、佐藤君にあんなことして…俺は、自分が怖くなった。…いつか、あんな行動を、彼女に対して取ってしまうんじゃないかって。彼女を傷付けてしまうんじゃないかって。そう思ったら…怖いんだよ」
俺も雅治さんも、ただ黙って二宮課長さんの言葉を待った。
「俺は、彼女が好きで堪らないんだよ。好きで、好きで…辛くて、苦しくて……堪らないんだ」
二宮課長、さん…
「簡単になんか諦められねーよ……でも、だからこそ……離れたいんだ」
握った手が、力を入れすぎなのか、小さく震えていた。
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