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決着? …6
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「それに……その想いを断ち切らない限り、また犯罪を犯すんじゃないですか?」
「お、小栗さんっっ⁈」
犯罪って!!
雅治さんのその物言いが、明らかに二宮課長さんにケンカを売る感じだったから、俺は慌ててしまった。
相手は仮にも上司なのだ。
言われた本人は、口を半開きにして、衝撃を受けたような顔をしている。
あぁぁ…
俺がワタワタとしていると、気を取り直した二宮課長さんが自嘲気味に「フッ」と笑った。
「小栗の言う通りだ。返す言葉もない」
そう言って、二宮課長さんもカップを持ち上げてコーヒーをゴクリと飲み込んだ。
えっ?
いや…
あれは犯罪じゃないんだから、認めなくても…
「うん」
そう、何かに頷いた二宮課長さんが、カップを戻してから俺を見た。
「佐藤くん。俺、ちゃんと気持ちに決着をつけるよ。小栗の言う通り、俺はそうして思いを断ち切るべきだ。…逃げずに、もっと早く…そうすべきだった」
まるで、今にも消えてしまいそうな雰囲気の彼は、俺に向かって頭を下げた。
ただ、次に顔を上げた時には、ほんの少し、目に力が宿っている気がした。
「まず、この気持ちにケリを付ける。だから…もしこの先、俺が職場を去るとしても、それは佐藤君のせいじゃない。俺自身の問題だ。勝手なことばかり言っているのは分かる。けど、どうか…これで納得してくれないだろうか?」
あぁ…
この人は、なんて不器用なんだ。
普段、器用に人と接していた顔は、自分を守るための仮面なのかもしれない。
他人を見透かすあの目は、雅治さんで言う所のオーラだ。
他人が近寄らないように…他人に見透かされないように、するための。
そんな思いで二宮課長さんを見たら、何だか可哀想になってきて…
「分かりました。それで…いいです」
そんな言葉が出た。
って言うか…雅治さんと二宮課長さんがそれで納得なら、それが納めどころなんだと思った。
「うん。…うん。ありがとう」
二宮課長さんが、肩の力を抜いたようにして微笑んだ。
「あの…」
突然、雅治さんが、ぶっきらぼうに口を開いた。
二宮課長さんが「ん?」と言った感じに雅治さんを見る。
「一つ、お聞きしたいんですが……なんで、佐藤君だったんですか?」
「…え?」
「二宮課長は、可愛けりゃ女も男も見境ないって噂を聞きましたけど」
ええっ⁈
それ、本人に言っちゃう⁈
「えっ⁈そんな噂があるの⁈…うわー…それは、凹む…いや!断じてそんな事はない!可愛い子は好きだけど女限定だし!」
二宮課長さんが慌てたようにそう言った。
「じゃ、尚更です。…なんで、佐藤君だったんですか?」
「っ!…いや、それは…」
二宮課長さんが、目線を彷徨わせた。
「教えてください。今後、二度とこんな事がないように。それを避けるために…知りたいんです」
雅治さんが、それまであまり向き合おうとしてなかった二宮課長さんをジッと見た。
雅治さん…
「あぁ…。そう、か。…うん。分かった」
二宮課長さんが、何度か頷いてから、ポツリと話し始めた。
「最初はね、ただ、可愛い子だなぁと思った。それから、可愛いのは見た目だけじゃないと気付くのに時間はかからなかったよ。知れば知る程、佐藤君という人物が魅力的に見えた。そのうち…もっと仲良くなりたいと思うようになってさ…」
うっ、何か…聞きたくない。
やっぱり、雅治さん以外に「可愛い」と言われるのは、気持ち悪い。
トイレにでも駆け込みたいけど、どうにも、逃げられるような雰囲気じゃなかった。
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