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突然のお願い
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S電機のジョブが終わって…4月になった。
新入社員が入って来て、職場に新しい風が吹く。
そんな浮き足立った感じの初旬…雅治さんの家に行った時の事だ。
「陸、明日の土曜日…空いてる?」
ソファで一緒にテレビを見ていたら、急にそんな事を言われた。
「え?うん。なんかあるー?」
雅治さんは、なぜか深妙な顔付き。
「姉貴…に会って欲しいんだけど…」
「うん。………えっ?何て?」
「俺の姉に…会って欲しい」
雅治さんの、お姉さんに、会う?
「……ええーーー!!」
俺があまりにも大きな声で叫んだもんだから、雅治さんがビクッと跳ねた。
「お姉さん?雅治さんのお姉さん⁈え?何でっ?あ、いや、会うと言っても、特に深い意味はないとか?あれっ?えーーと」
俺、混乱中。
だって、お姉さんって…
「陸の事を、姉貴に紹介したいと思って」
「………」
紹介?
「……やっぱり、嫌?」
紹介って、紹介だよね⁈
意味のある、紹介⁈
「いや!…あ!そのっ!嫌とかじゃなくてっ!紹介って…えーと。その…」
「ん。…付き合ってるって、紹介するつもり」
その顔は…冗談…言ってる顔には見えない。
そもそも、こんな事、冗談で言わないよね⁈
その意味を理解して、頭がスーッと冷えていくのが分かった。
「あの…それは…家族に、その…カミングアウトする…って事?」
俺の言葉を聞いて、雅治さんがゆっくりと頷いた。
「そう…なるかな?とりあえず、親に言う前に、姉貴に…と思って」
「そ……っか」
雅治さん、そんな真面目な事を考えていたなんて…
カミングアウトって、結構…いや、かなり勇気がいるよね?
俺にはまだ、そんな勇気はない…
「あぁ。陸は焦らなくていいよ。…これは、俺の個人的なケジメなんだ」
俺の頭の中を読んだかのように、雅治さんがそう言った。
「ケジメ?」
「ん。…ま、それについては追い追い話すけど。…で、どうかな?会ってくれる?ただ、無理はしなくていい。紹介するって事は…陸もそういう目で見られるって事だから」
「…あ」
雅治さんの言った事に、心臓がバクバクと音を立てた。
雅治さんがカミングアウトしたら、俺は雅治さんの家族に、同性愛者として見られる事になる。
しかも…雅治さんの家族からしたら、俺は雅治さんをこの道に誘惑した悪者に映るかもしれない。
それを思うと、何だかとても怖くなった。
「もちろん。陸の事は、俺が全力で守る。もし…もしも、受け入れられなかった場合は、間違いなく陸を選ぶ」
雅治さん…
「もし、嫌なら…無理して会わなくてもいい。ただ、姉貴に信じてもらうには、陸がいた方が…。ま…そう、思っただけだから」
雅治さんが、気弱な感じでそう言った。
どうしよう…
って…悩む事、ないじゃん?
ドキドキしてるのは、こんな事を、突然言われたからであって…
俺の心は決まってる。
「会う。…お姉さんに、会ってもいいよ」
「ほんと、か?」
「うん。…いい。俺も一緒に、お姉さんの反応を受け止めたい」
俺がそう言うと、雅治さんが眉を下げて嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。…付き合わせてごめんな?…ありがとう」
「こっちこそ…家族に紹介してくれるなんて…ビックリしたけど…ありがとう」
付き合ってるのを家族に紹介するって、何か特別な儀式みたいだよね。
想像出来ない怖さの中に、ある種の嬉しさを見出した俺は、雅治さんにギューっと抱きついた。
雅治さんも、いつもより力強く抱き返してくれた。
きっと大丈夫。
雅治さんと一緒なら。
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