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ご対面 …4
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「…うん」
不意に、遥香さんが顔を上げた。
「とりあえず、今日のところは、この話はここでお終いにしましょ?…お父さん、お母さんには…まだ話さないで。分かったわね?」
有無を言わさぬ強さで、雅治さんにそう突き付ける。
「いや…でも…」
「い、い、か、ら!とりあえず、お母さん達に言うのはまだ早い。いいわね?言っちゃ駄目よ?言うタイミングは私が見定めるから。…返事は?」
「分かっ…た」
「よし!」
力強く頷いた遥香さんは、店員さん呼び出しのベルを押した。
「あんた達のせいで、食べる気失せたからね……まったく」
すぐにやって来た店員さんに、手をつけていなかったサンドイッチをテイクアウトするよう頼む。
「あの…すみません」
遥香さんに頭を下げる。
「あら!陸くんが謝る必要ないのよ?…この子が驚かせるのが悪いんだから!」
そう言った遥香さんは、別に俺に対して変な感情は無さそうな雰囲気で、何だか少し嬉しかった。
「あー、そうだ。一つ言っておくけど、私、同性愛にそれほど偏見はないのよ。…まぁ、自分の弟がって言うのには…ビックリしたけど。…でも、友達に同性で結婚した子もいるしね。免疫はある方じゃないかな」
「えっ?結婚⁈…同性で、ですか?」
遥香さんの言葉に、思わず反応してしまう。
「え?あぁ、ニューヨークにメイクの勉強をしに行った時のね、その学校で出会った友達よ。日本人じゃないのよ」
「あ、そうなんですね…」
あ、なるほど…海外の人か…
いいな…
同性婚が認められる社会。
遥香さんが、何かを考えるように「うーん」と小さく唸った。
「まぁ、そうね。雅くんの人生だもん。私がどうこう口出す気はないわ。別に悪いことしてる訳じゃないんだし?…あんたの好きなようにすればいいんじゃない?」
そう言って、それまで端に置いていた紙袋を、雅治さんにグイッと押し付けた。
「しっかりやんなさい」
そう声を掛けられた雅治さんは、とても嬉しそうに頷いた。
さっきの暗い様子は何処へやら…
むしろ楽しそうな雰囲気で、遥香さんが上から下へと俺に目をやった。
そして突然、何かを思い出したように顔を少し高揚させて、俺に言った。
「ね?あなた達、バレンタインの時にはもう、付き合ってたのよね?」
「え?あ、はい」
「あぁ!雅くんを変えたのはあなたね?」
「えっ?」
遥香さんは、俺と雅治さんを交互に見る。
「ねっ?…ふふっ。そっかぁ!」
よく分からないけど…
何かに納得した?
俺のこと、拒絶してる感じはないよね?
むしろ、好感触?
思わず、雅治さんを見ると、俺の視線に気付いた雅治さんが、こちらを見て頷いてくれた。
雅治さんのお姉さんに拒絶されなかった事が、やけに嬉しくて、思わず笑顔が溢れる。
雅治さんも、それにつられるように、微笑み返してくれた。
「あらまあ」
そのやり取りを見ていた遥香さんが、ポツリと呟いた。
「雅くんのそんな顔…初めて見たわ」と。
その後、遥香さんはテイクアウト用に包まれたサンドイッチを受け取ると、すぐに席を立った。
「雅くんが本気なら、私は応援するからね?ただし、事が事だけに、中途半端はいけないわ」
「…ありがとう」
雅治さんが軽く頭を下げると、遥香さんは嬉しそうに微笑んだ。
部屋から出ようとした遥香さんが、ふと立ち止まって俺を振り返る。
「ねぇ?雅くんと付き合うの色々大変でしょ?」
「え?いや…そんなことないです」
「ふふっ。まぁ、何か困った事があれば、私に言ってね?…こんな雅くんだけど…宜しくね」
そう言って、とても優しい笑顔を俺にくれた。
よ…宜しくね…だって、っ。
まさか今日、そんな笑顔を貰えるなんて思っていなかったから、かなり嬉しくて…
俺は思わず、泣きそうになってしまった…
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