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手のひらから始まる …5
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「本当に…いいのか?」
雅治さんが、俺にそう聞いた。
「え?」
「俺と…その…結婚…」
「うん」
何か言葉で伝えなきゃ、とは思いつつ、恥ずかしいから頷く事しか出来ない。
「本当に?」
「本当だよ」
「俺、冗談で言ってるわけじゃないからな?その…本当に一生って意味で。本当にいつか、籍を入れてほしくて…」
あぁ…
雅治さんって、こういう時、本当に自信がない人だよね。
以前、その…初めて俺と繋がる時も…
散々確かめられたのを思い出した。
俺の気持ち、ちゃんと伝えなきゃ。
雅治さんを不安にさせないように。
「ねぇ?俺からも言っていい?」
「え?」
そうだ…俺からも言えばいい。
少し身体を離して、雅治さんを見る。
薄明かりの中、雅治さんの目を捉えると、真剣な雅治さんの目がそこにあった。
自分がこれから言おうとしてる事に対して、心臓が早鐘を打ち始める。
ちゃんと言わなきゃ。
言わなきゃ伝わらない。
「雅治さん。……俺も、雅治さんと結婚したい。…俺と、結婚、してください」
雅治さんの瞳が揺れる。
それから、ゆっくり頷きながら微笑んでくれた。
「俺…料理まだ下手くそだけど、ちゃんと頑張るし、そのうち他の家事も覚えるし…アイロンがけとかもちゃんと出来るように覚える。…あとは」
「陸。…ありがとう」
雅治さんが俺の言葉を遮るようにして、俺の名前を呼んだ。
「陸は今のままでいいよ。無理する必要はない」
雅治さんが優しくそう言った。
そんな雅治さんの目を見ていたら、急に不安なことが頭に浮かんできた。
あぁ。
雅治さんが、さっき何度も俺に確認した気持ちが分かってきた。
いいって言われても、自信がないんだ。
だって俺は…
「雅治さんこそ…本当に、いいの?…俺なんかで、いいの?」
「俺は、陸がいいんだよ」
「でも…俺、男だもん…いつか、飽きたりするかも…しれない。いつか…その…女が良かった…とか、ならない?」
「ならないよ」
うじうじし始めた俺を諌めるように、雅治さんが強めに即答した。
「でも…俺……その…こ、子供…産め、ない…し、俺と結婚しても、誰も祝福してくれない…かもしれないし…そんなので本当に…」
一度堰を切った不安が、次から次へと口から溢れ出す。
「りーく」
雅治さんが大きな声を出したので、身体がビクっと震えた。
「子供なんて気にしちゃいない。男女でも子供産まない選択してる夫婦もいるんだから、子供が居ないのは変なことじゃない。それより俺は、陸が欲しいんだ。
ちゃんと考えた。この気持ちを陸に伝える前に、ちゃんと。…真剣に考えたよ。で、このまま歳取って、しわしわのじいちゃんになっても…陸と一緒にいたいって。俺のこれからの人生には陸が必要だって。そう思ったんだ」
雅治さん…
「俺も、自信ねーよ…。いつか、陸が、やっぱり女が良いって言って、離れていくんじゃないかって。世間の目が辛くて、俺の元から去っていくんじゃないかって。不安で仕方ない。……むしろ、不安しかねーよ」
「…っ」
雅治さんの、真剣な言葉と眼差しに、心臓が掴まれたような感覚がした。
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