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【番外編】岡本賢治の葛藤 …6
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「ごめん。ちょっとトイレ」
「おー」
さとちんが席を立って、一人でぼーっとしてると、マスターが俺の前にやって来た。
「岡本くんはさー。佐藤くんのこと、祝福してあげないの?」
「え?」
突然そんなことを言われて驚く。
「いや…さっき、プロポーズされたって佐藤くんが言った時、お祝いの言葉がなかったから」
「あ…」
そういや…俺、なにも言わなかった。
複雑そうな俺の顔を見てか、マスターがこう言った。
「認めたくないのかな?岡本くんは」
「え?」
「佐藤くん達のこと」
「……」
認めたくないないわけじゃない。
けど…
「前に、佐藤くんの彼にピンチから助けてもらった時、彼のことカッコいいって言ってたデショ?俺、てっきり岡本くんは佐藤くん達のこと認めてると思ったけど…」
「…認めてなくは…ないんですけどね」
「ふーん。じゃ何が気に入らないの?」
「え?」
「いや。岡本くん、佐藤くんの友達だよね?」
「え?はぁ、まぁ…」
マスターがため息を吐いた。
まるで俺を責めているようだと思ったのは、俺にやましい気持ちがあるからだろうか。
「佐藤くんさ、付き合いだしてから変わったと思わない?」
「え?」
「良い方に」
「……」
何か変わったかな?と、ピンと来ない…
「ちょっとー。岡本くん、佐藤くんのことちゃんと見てる?」
「……」
「友達ならちゃんと見てあげないとさー。何を意識してるのか知らないけど、佐藤くんは佐藤くんでしょうが」
さとちんは、さとちん。
それくらい……
「なにー?俺の話?」
「わ!びっくりしたー!」
さとちんが急に後ろから声をかけてきた。
「何、その驚き方…。俺の悪口言ってたとか?」
さとちんがジトっと俺を見ながら椅子に腰掛ける。
「いや、佐藤くんって最近すっかりオシャレさんになったよねー、って話しだよ」
マスターが、サラッと嘘をつく。
「えっ?そうですかねー?へへへ」
さとちんが満更でもないように照れた。
あ、そう言われてみれば…
さとちんって、最近オシャレになった。
…そうだ。小栗さんと付き合いだしてからだ。
昔は、ぶっちゃけ、何かダサいと思ってた。
それは、格好がさとちんに似合ってなかったからだ。
そんな髪型も服も、今はちゃんと似合っている。
さとちん「らしい」魅力がちゃんと出てる。
小栗さんにもらったらしいその腕時計も…ブランドっていう色メガネ抜きで見たら…さとちんにすごく似合ってる。
何で…
何で、気付かなかったのか。
こうやってマスターと話してる顔を見ても…
昔より何か余裕があるって言うか…
つまり、満たされてるんだ。
今の日常に。
それは「幸せ」と言うことに他ならない。
「あ…来たみたい」
さとちんがスマホを見ながら言った。
迎えが…来たのか。
「マスター、ごちそうさまでした」
さとちんがそう言って財布を出す。
「いや、今日はいいよ。佐藤くんも岡本くんも。めでたいからね!俺からのお祝いって事で」
「えっ?いや、でも…」
「こう言うめでたい事は遠慮しないの!」
そう言ってニコッと笑ったマスターの言葉が、嬉しい反面、なぜか胸がキュウッと痛くなった。
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