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【番外編】秋吉菜々子の観察眼 …8
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ジェットコースターを降りた小栗さんは、心なしか顔色が悪かった。
乗った時はあんなこと言ってた山田さんは、小栗さんを茶化すことはせず、出口に向かって歩く前の二人を微笑ましそうに見ている。
「ん?」
そんな私の不思議そうな視線に気付いたのか、山田さんが私を見た。
「あ、いえ…何でもないです」
そう答えると、山田さんがフッと笑った。
「オグさ、りっちゃんと出会ってから、ホントに変わったんだよ」
そう、私だけに聞こえるように小声で言った。
「無理だったジェットコースターに乗っちゃってさぁ。ホント、なんてゆーか…すげーよなぁ」
最後はひとり言のように、ポツリと呟いた。
…あぁ、そうか。
てっきり私は、山田さんは、小栗さんが怖がってるところを見て笑いたいのかと思ってた。
けど、そうじゃないんだ。
きっと、佐藤さんのおかげで変化した小栗さんを見たかったんだ。
外へ出ると、前の二人と並ぶ。
「クックッ…オグ、マジでジェットコースターに乗れるようになったのな?スゲェ、スゲェよ!あ、ヤベェ、ウケてきた」
山田さんが小栗さんの肩に腕を回した。
「ウゼェ」
小栗さんが、その腕を払う。
「プッ、照れちゃって!!」
山田さんはそう言って笑いだす。
あれ?やっぱり笑いたかった?
…いや、違う、のかな?
茶化すように見せかけて、実は何か別のことを伝えてる?
そうだよね。
ただ、馬鹿にしたように笑ったり、こうやってケンカ腰に返事したりする関係なら、中学から今まで続いていないはずだ。
もっと深いところで、二人はやり取りしてるのかもしれない。
男の友情の不思議だ。
その後は、先にファストパスを取っていたシューティングのアトラクションに向かった。
「何か賭けしよーぜ」
山田さんがそんなことを言い出した。
小栗さんが首を傾げると、佐藤さんが「シューティングは点数が出るんですよ」と、小栗さんに説明してた。
ってゆーか、小栗さんって、佐藤さんと山田さん(いや、おそらく佐藤さん以外全員)では、話す時の顔が全然違う。
「そんなの、やり慣れたヤマと勝負したって、絶対、俺らが負けるだろ?そんな賭けやらねーよ」
小栗さんがもっともな事を言った。
「えー!」
と、山田さんは不服そうで、今度は私をチラッと見たけど
「アキちゃんを巻き込むな」
と、小栗さんがフォローしてくれた。
って言うか!
今、小栗さんに「アキちゃん」って言われた!
なんかビックリ!!
ま、佐藤さんも山田さんもそう呼んでくれるけど…
そうか。意外と合わせてくれる人なのかな?
昔はライバルとして見てたからな〜。
あまり良いイメージで見てなかったけど…
あ、小栗さんも昔は私をライバルとして見ていたはずだから…以前の私への態度は冷たかったかもしれない。
実は優しくて良い人なのかも。
そんなこんなで、アトラクションに乗り込んだ。
私と山田さんは賭けは無しで、点数だけ競ってみたけど…
結局、山田さんには全然敵わなかった。
むむむ…強すぎる。
賭けなくてよかった…
先に降りた佐藤さん達は、すごく楽しそうに何かを話してる。
小栗さんが「何してもらおうかな」と佐藤さんに言って、佐藤さんが頬を膨らましているのがチラッと見えた。
んん?
もしかして、二人は賭けをして…小栗さんが勝ったのかな?
賭けの内容は…なんだろう。
ま、二人が楽しそうで、何よりです。
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