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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …5
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「あれ?佐藤君、どうした?忘れ物?」
そんなマスターに「いや…」と口を濁して、俺のことを待ってくれてたお兄さん…マキさんに会釈した。
「え?どういうこと?」
マスターがマキさんを見て、渋い顔をした。
「大丈夫だって!取って食ったりしないから。ほら、隣座って!」
「あ、はい」
「マキちゃん、何やってんだよー。佐藤君、ごめん。こいつ、思ったら即行動みたいな面があって…。無理矢理何か言われたとかじゃない?」
マスターが本当に申し訳ない顔をして俺を見た。
「いえ、あのっ、そう言うんじゃないです。ただ少し、話したくなったので…」
「そう?本当ごめんな。…マキちゃん、他のお客さんのプライベートな話題に首突っ込むの、ホントやめてくれよな。今度やったら出禁に…いや、その前にタカシにこの事を…」
「あわわ!ごめんなさい!いや、今回は特殊ってゆーか、悩みを聞くには私が適任だと思って!…ねっ?もう二度とやらないから!今回は見逃してっ?」
慌てた様子で手を合わせるマキさん。
タカシ…って言うのは、彼氏さんのことだろうか。
そんなマキさんにマスターが驚いた顔を見せた。
「あれ?何?ということは?もしかして、マキちゃん、自分の正体バラした…?」
「え?あ、そうよ?そういうことなの。ねっ?」
茶目っ気たっぷりにウインクしたマキさんを見て、マスターは大きくため息を吐いた。
そうか、マスターはマキさんが男って知ってるのか。
その上でキューピッドになった、と。
益々、マキさんに親近感が湧いた。
「まぁ、佐藤君が迷惑してないのなら…今回は見逃すけど…」
マスターはそう言って、チラリと俺を見た。
「え?あ、はい!俺の方こそ、その…マキ、さんに頼りたいと言うか…あの…」
どう言っていいか分からず、口籠ると
「ほーら、ここからはあっちゃんには難しい話よー?ねー?」
マキさんが胸を張ってそう言った。
「うぅ…。佐藤くん、ごめんな?こいつ、悪い奴じゃないけど…何か嫌なことがあったらすぐ俺に言えよ?マキちゃん、余計なことしたら…分かってるだろうな?」
「分かってるって!ほーら、仕事に戻った!」
そう言われたマスターは、俺を気遣うようにしながら、シブシブと言った感じで、別のお客さんの方に移動した。
「さてと、邪魔者が消えたところで…何から聞こうかな?えーと、君の…あ、そうだ。名前。さとう君って言われてたよね?」
「あ、はい。佐藤です。…すみません。初対面なのに、甘えてしまって」
「いいのよー。私から声かけたんだし。で?えーと、なんだっけ?友達が言ってたの…。結婚とかデートとか、そう言うワードが聞こえたけど…」
「ぅ…。ハイ」
それから俺は、オカに言われたこと、婚約した彼がいること、最近感じていたモヤモヤなこと、それらをポツポツと、でも止まることなく喋った。
自分でも驚いたけど、話し出したらどんどん言葉が溢れてきた。
そうだ。
こんな気持ち、誰にも話したことがない。
だって、周りにこういうことを話していい相手がいなかったから。
言っても、絶対に理解されない気持ちだから。
それらを溜め込んだ結果が、今の俺だ。
オカの酔っ払い発言でさえ、他人から見たら泣きそうな顔するほど反応してしまうくらいに…
マキさんは、時折ウンウンと頷いたり、「あー」と共感の意を示してくれたりしながら、俺の話を最後まで聞いてくれた。
「そっか。…分かる。分かるなー」
話を聞き終えたマキさんは、目線を落として寂しそうに微笑んだ。
その共感の言葉が妙に嬉しくて、なんだか泣きそうになった。
途中でマスターが出してくれた温かいお茶を、涙を飲み込むように飲み込む。
「佐藤くん達は、付き合ってどれくらい?」
「えっと…。1年とちょっと、です」
「そっか。私もさ、全く同じことで悩んだことあるよ。付き合って初めての冬だったかなぁ?一緒に歩いていても、必要以上に近寄れない。周りのカップルが普通に出来てることが、私達には出来ない…。辛かったなぁ」
マキさんは遠くを見ながら、言葉を発した。
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