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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …7
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「ま、でもコレって特殊…と言うか、変だよね?ぶっちゃけ、女装じゃない?私、実は元々こう言うのに興味があったし、彼もそれを理解してくれたから出来ているだけで…。なんてゆーか、こういう趣味のある私、気持ち悪いよね?」
マキさんが、伺うような目で俺を見た。
「いえっ。そんな事ないです!だって、誰にも迷惑かけてないし、二人が幸せなら何の問題もないですよ。それに…その、マキさんは、趣味の域を超えてますよ。すごく綺麗です」
俺がそう言うと、マキさんは嬉しそうに微笑んでくれた。
「ありがとう…。そうだ。佐藤くんは、もし人目を気にしないとしたら、どんなデートしたい?」
「え?…うーん…そう、ですね」
そんな恥ずかしいこと、言えない。
なんて思いつつ、俺はある一つのことを考えていた。
何も言わずに、俺の返事をじっと待つマキさん。
う…、不思議だ。
この目に見つめられると、喋りたくなるのは何故だ。
そうだ。俺は酔っ払いだ。
マキさんも分かってるはず。
それを認めて、喋っちゃえ。
「あの…イルミネーション、見に行きたいです」
聞こえたか分からない。
そのくらい小さな声で呟いた。
だけど、マキさんはちゃんと聞き取ってくれたみたいで「いいね」と笑った。
「あのキラキラした寒空の下を、彼と手を繋いで歩く…うん。幸せよねぇ」
マキさんはうっとりした感じで遠くを見た。
彼とデートした時の事でも思い出しているのだろうか?
「マキさんは、彼とイルミネーションに…」
「ん?…ふふっ。うん。この格好で去年行ったよ。…すごく、良かった」
俺に気を使ったのか、遠慮がちに言ってくれたけど、その顔は本当に幸せそうだった。
「良い、なぁ…」
ポツリと出た言葉。
心の中だけで呟くつもりが、溢れ出てしまった。
俺も、雅治さんと、一緒に手を繋いで歩きたい。
…雅治さんなら、もしかしたら「いいよ」って言ってくれるかもしれない。
人目を気にせず、手を繋いでくれるかもしれない。
だけど、そんなこと出来るわけない。
ただでさえ雅治さんはカッコよくて人目を引くのに…
さらに男の俺が手を繋いで隣を歩いてたりなんかしたら、益々注目の的だ。
面白がった人達が、ネットに写真を拡散したりするかもしれない。
知り合いに会う確率だってゼロじゃない。
もし、そんな事が起これば…俺達のこれからはどうなるだろう。
「佐藤くん…」
ふと名前を呼ばれてマキさんを見ると、俺の顔を見たマキさんが悲しそうに眉を下げた。
…あれ?
俺、今、どんな顔をしているんだろう。
ヤバい…ヤバい。
なんか、二人の間に、微妙な空気が流れる。
しばらくの沈黙の後、最初に言葉を発したのはマキさんだった。
「もし…もしよければ、って言うか、佐藤くんにその気があればなんだけど…その日1日、魔法にかかってみるっていうのはどう?」
「まほう、ですか?」
「うん。そう。私と同じ…魔法」
マキさんと…同じ?
それはつまり…女に化けると…
「いやいやいや…無理です。俺なんかがそんなこと出来るわけないです」
「そう?うーん、そっか。でも…もし、もしよ?それが無理じゃなくて、出来るとしたら?魔法がかかるとしたら、どうする?」
「え?」
もし、魔法がかかるとしたら?
1日だけでも、女になれて、雅治さんとイルミネーションの下を手を繋いで歩けるとしたら?
所詮は夢の話。
日本から同性愛者への偏見の目が減らない限り、俺には出来ないデート。
それこそ、俺が女にでもならなけりゃ叶わない夢。
「そう、ですね。魔法があるなら…かかりたい、ですね」
俺のその言葉を聞いたマキさんは、嬉しそうに口角を上げた。
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